EVの充電時間を大幅短縮するハイパーチャージャー! でも自社のクルマしか充電できないってどうなの? (2/2ページ)

誰でもどんなEVでも使用できる急速充電器が望ましい

 ポルシェやアウディなどドイツ勢による超急速充電の採用は、欧州の二酸化炭素排出量規制に適合するため、高性能スポーツカーや大柄な車種を早期にEV化しなければ法規に適合できない事情がある。ことにアウトバーンで時速200km以上の速度で移動しようとすれば、大容量のリチウムイオンバッテリーを車載しなければならず、それには長い充電時間を要する。

 ガソリンスタンドの発想からすれば、超急速充電器を使おうとなる。スポーツカーはともかくも、SUV(スポーツ多目的車)を含め大柄で重い車種を高付加価値(プレミアム)の象徴として利益を上げてきた結果が、その状況を生じさせている。

 EVは、日産サクラや三菱eKクロスEVのような軽自動車でさえ、登録車と同等以上の上質さや優れた走行性能を備え、大きいから偉いとか、高級だ、といったこれまでの概念を転換する潜在性がある。21世紀のプレミアムとは、大きいことではなく、適切な寸法でちょうどいいという満足を与えることを教えるEVだ。

 ところで、超高速充電器が数多く整備されたとしても、車両側にそれに対応した機能がなければ利用できない。適切な大きさで十分満足できるEVのバッテリー容量がそれほど大きくないとすれば、超急速充電器は宝の持ち腐れとなりかねない。普及型のEVであれば、既存のCHAdeMOの急速充電器での高出力型で十分だ。ただし、EVの台数が増えれば、複数のEVが同時に充電できるコネクターの数は必要だ。

 超急速充電器は、高電圧と高電流を使う。そこでの短絡や火災といった事故も、充電器の保守・管理の仕方如何では懸念される。普及すればするほど、管理の行き届かない充電器が現われる可能性も出てくる。危険性の排除という点で、超急速充電器を販売店で管理するのはよいことだと思う。ただし、自社銘柄のEVしか充電できないとする姿勢は、他銘柄との差別化ともいえるが、排他的で、本当の意味でのEV普及、あるいは環境への適合にはそぐわない行動だ。

 自ら急速充電器の開発も行い、販売店に設置した急速充電器を広く開放してきた日産や、同じく販売店の急速充電器を他社EVに開放してきた三菱自動車の取り組みは、世界に誇れる充電整備の取り組みであり、真のEV普及を目指す姿だ。


御堀直嗣 MIHORI NAOTSUGU

フリーランスライター/2023-2024日本カー・オブ・ザ・イヤー選考委員

愛車
日産サクラ
趣味
乗馬、読書
好きな有名人
池波正太郎、山本周五郎、柳家小三治

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