新車発表時には完売している? あのボディカラーは「赤」ではない!? フェラーリ伝説は「本当」or「単なる都市伝説」?? (1/2ページ)

この記事をまとめると

■スーパーカーメーカーとして名高いフェラーリ

フェラーリほど伝説めいたエピソードに彩られたブランドはそう多くない

■この記事ではフェラーリにまつわる伝説を紹介

フェラーリだから許される!? 伝説の数々

 フェラーリはフェラーリであり、またフェラーリであり続けねばならない。ルイジ・キネッティ、言わずと知れた名レーサーであり、エンツォ・フェラーリの数少ない友人にして、アメリカで最初のフェラーリ正規ディーラーを始めた人物の言葉です。含蓄たっぷりですが、フェラーリほど伝説めいたエピソードに彩られたブランドは世界を見まわしてもそう多くはありません。そこで、編集部に寄せられた「ほんまでっか?」伝説をいくつかご紹介してみましょう。

「発売前から完売」&「なんで完売したクルマの発表会や試乗会をやるの?」

 これは、ラ フェラーリ発売のタイミングでクルマ業界だけでなく世界的に話題となったかと。まず、発売前に完売してしまう理由は簡単で、フェラーリはエンツォ存命時から既存の顧客に向けて「これこれこういうモデル作りますよ」と発表のかなり前に知らせるから。で、彼らは詳細なスペックはおろか、値段さえ知らされなくとも、それがフェラーリの特別なクルマなら無条件に買うわけです。

 ひとくちに既存の顧客といっても、同社の場合は世界中の王侯貴族や、人品骨柄卑しからざる大金持ちといったメンバーがほとんど。もっと詳しく言えば、前述のキネッティからフェラーリのレーシングカーを購入し続け、転売などすることなくしっかりレースにエントリー(しかも勝ったりなんかしたらバッチリ!)した顧客にほかなりません。もちろん、ホーア大佐率いるイギリスの「マラネロ・コンセッショネアーズ」なんて由緒ある正規ディーラーの太い客なんかもそうした顧客候補でしょう。ちなみに、こうした顧客はたいていの場合、ワンオフモデル(いまでいうフオリ・セリエ)の注文歴なんかもあったりして、いわゆる「特別なお客様」にほかならないのです。

 その昔は、王侯貴族であろうとも新顔の客はマラネロ詣でがマストであり、エンツォの印象を損ねたら一生売ってもらえない、などとまことしやかな噂まであったほど(これは後にキネッティのイタリア人らしい「大げさな表現」だとバレています)。

 引き合いに出して申し訳ありませんが、かの「ヤナセ」でさえ新車が出るたびに黙って買ってくれるお客様にこと欠かなかったといいますから、世界にはレベルの違う客が大勢いてもおかしくはないでしょう。

 また、いまとなってはキネッティやホーア大佐のディーラーも(資本が変わって)ありませんので、よりプラクティカルなことになっています。つまり、世界各国の正規ディーラーと好ましい取引をしていることや、コルセ・クリエンティやXXプログラムといったサービスを利用できている(これとても、正規ディーラーとの信頼関係なくしては無理)ことが「特別なお客様」の第一条件といえるでしょう。こうしてみると、普通の顧客になるのは正規ディーラーと根気強く付き合えばなれそうですが、次のレベルに進むのはいろいろと難しいことがおわかりいただけるはず。

 で、完売したクルマの発表会や試乗会をやる理由もさほど込み入ったものではありません。フェラーリが作った「価値あるクルマ」を、限られた「特別なお客様」だけでなく、広く世界中の人々に知らしめたい(いわゆるブランドの価値と存在の証明)から、といったところでしょうか。フェラーリにとっては、一般的なカタログモデルはもちろん、フオリ・セリエやスペチアーレといったモデルも文字どおり特別な存在です。フェラーリがフェラーリであり続けるには、こうした特別なモデルが欠かせません。モンテゼーモロ社長が就任する以前、それはF1マシンが担う役割でしたが、同社長は特別なモデルがあげる収益を目ざとく見つけ、クラシックF1の動態保存や中古F1の販売・レストアといったサービスを拡充。後のクリエンティ・サービス、はたまたクラシケといったビジネスへと発展させただけでなく「特別なお客様」の増加、囲い込みに成功したといえるでしょう。


石橋 寛 ISHIBASHI HIROSHI

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三菱パジェロミニ/ビューエルXB12R/KTM 690SMC
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DJ(DJ Bassy名義で活動中)/バイク(コースデビューしてコケまくり)
好きな有名人
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