新車発表時には完売している? あのボディカラーは「赤」ではない!? フェラーリ伝説は「本当」or「単なる都市伝説」?? (2/2ページ)

F1の車体色は時代によってまちまち!

「F1は朱色でロッソ・コルサではない!?」

 フェラーリのマーケティング部門にいわせると「ロッソ・コルサは我々のDNAに根差しています」と、あたかもF1のカラーリングに発祥するカラーかのような印象です。が、F1の車体色は実際のところ時代によってまちまち、バラバラといったところでしょう。

 たとえば、エンツォがイケイケでヴィットリオ・ヤーノやランプレディをこき使っていたころは赤というよりエンジに近い感じだし、エンツォ大好きイタリアンパイロットのミケーレ・アルボレートが乗っていたころになると朱色っぽい赤。はたまた、ラウダやビルヌーヴの頃は深紅に近い赤だったりと、デザイナーやエンツォの意向によってブレまくりといってもいいかと(笑)。

 実際、フェラーリのカラーコンフィギュレーターをいじってみると、ロッソと名の付くカラーが驚くほどたくさん出てきます。ロッソ・コルサを筆頭に、おなじみロッソ・スクーデリア、ロッソ・ムジェロ(言うまでもなくフェラーリのホームコース)、ロッソ・ディーノ(スペチアーレのディーノはこのロッソではない模様)、ロッソ・ベルリネッタ(BBでなく、大昔のルッソやTdfっぽい赤)さらには、ロッソ・フォーミュラ1 2007なんて設定まで! 出荷モデルの85%がロッソというフェラーリだけのことはありますね。

 ちなみに、これだけロッソ大好きなフェラーリですが、コーポレートカラーはイエローです(笑)。F1やそれ以外のレーシングカーで用いられるエンブレムは長方形も盾型にしても地色は黄色が用いられているほか(なお、市販車はエンブレムでなく馬アイコンだけというのが原則)、社内の用箋、鉛筆、マグカップも黄色+ウマをモチーフとしています。これは、フェラーリ本社があるマラネロが位置するモデナ県の紋章を見れば納得するはず。黄色い地色に青い十字というデザインで、レペゼン「マラネロ」なエンツォらしい背景でしょう。もっとも、エンツォが終生使っていたインクの色は紫だったそうです。真偽のほどは不明ですが、正妻ラウラが好きな色だったというロマンチストな一面も。

「雨の日には乗りたくないF40」

 これは、ドイツのクルマ雑誌「Auto Motor und Sport」が企画したF40 vs ポルシェ959にF40推しとして登場したゲルハルト・ベルガーの発言でしょう。一方、959推しとして登場したのがワルター・ブルン(ブルン・ポルシェ・レーシングのオーナーで、元々はル・マンにも962を駆ってたびたび出場した名レーサー)。お互い試乗し合ってどちらが優れているかを競うといった内容でした。何を隠そう、この記事は筆者が編集部に属していたスーパーカー雑誌に掲載されたので、お読みになった方もいるかもしれません。

 記事の終盤で、ふたりがそれぞれインプレッションを述べたのですが、その一節が先のセリフ。F1パイロットをしても、F40の荒々しさは御しがたいものと、当時は度肝を抜かれたものです。ベルガーはF40の開発にも携わったとされており、その途上でもツインターボのセッティングには手を焼いたことを後から認めています。

 はたして、エンツォはこのセリフを聞いてどんな顔をしたものか、じつに興味深いところ。エンツォは生涯をレースに費やしたといっても過言ではなく、本音の部分ではフェラーリといえども公道を走るクルマは眼中になかったはず。そんな彼が最後に手がけたF40は、たとえナンバー付きとはいえ、ベルガーでさえ苦労をするというコンペティションマシンにほど近いものです。個人的な想像を述べるとしたら、エンツォはしてやったりとばかりにほくそえんでいたのではないでしょうか。


石橋 寛 ISHIBASHI HIROSHI

文筆業

愛車
三菱パジェロミニ/ビューエルXB12R/KTM 690SMC
趣味
DJ(DJ Bassy名義で活動中)/バイク(コースデビューしてコケまくり)
好きな有名人
マルチェロ・マストロヤンニ/ジャコ・パストリアス/岩城滉一

新着情報