笑っちゃうほど使えない……けどそれがいい! クルマの概念をぶち破る「実用性」度外視のモデル3台 (2/2ページ)

国産車にも割り切ったモデルがあった!

 さて、そんなケータハム・セブン同様、スペースと実用性を犠牲にしたクルマが、じつは日本車にもあるのです。それが、ダイハツ・コペンです。ダイハツ工業が製造・販売する軽自動車規格の2シーター・オープンカーですが、2002年のデビューから2014年のフルモデルチェンジを経て、現在でも地道に発売されている人気モデルでもあります。

 ボディサイズは3395×1475×1280mm、車両重量は870kg、最高出力は64馬力なので、先述のスーパーセブンやほかのライトウェイトスポーツカー(例えばマツダ・ロードスター)ほどのスポーティな走りはできません。が、電動フルオープンがもたらす爽快感と、等身大のファン・トゥ・ドライブが味わえる気軽さは、唯一無二の存在といえるでしょう。

 しかし、このコペンもまたコクピットは非常に窮屈なのです。バケットタイプのシートを奢っていることもあって、ちょっと体格が良い人は身動きするのも大変かもしれません。荷室に至ってはスーパーセブンよりも点数が低いかもしれません。屋根をクローズにした時はそこそこ積めますが、オープンにすると電動ルーフがトランクスペースに収納されるため、女性のハンドバッグ程度しか入らなくなってしまうからです。そんな実用性皆無のコペンですが、なにやら仕事をリタイヤした夫婦に大人気だとか。コペンにお乗りの熟年夫婦は、どのようにカーライフを楽しんでいるのか知りたいものです。

充実のキャビン&格好いい荷台があっても利便性悪し!?

「小さい箱に物は入らない」という物理の法則(?)を証明したのが、先述のスーパーセブンとコペンです。では、大きなボディのクルマなら人も荷物もたくさん積めて実用性は高い! と言えるのでしょうか。そこで、トヨタ ハイラックスを例に取って、この説を検証してみましょう。

 もともとトヨタ・ハイラックスは1968年に初代モデルが発売されましたが、売れゆきがあまり芳しくなかったために製造・販売を中止。その後、アウトドアブームの煽りを受けて、2017年に再デビューを果たしたのでした。現行ハイラックスは150馬力の2.4リッター直列4気筒ディーゼルターボと、質実剛健なラダーフレーム&リーフリジッドサスペンション(リヤ)が相まって、悪路をものともしない走破性を発揮。アウトドアアクティビティを愛するコアなファンからは、高い評価を得ています。

 で、ここで「んじゃあ、アウトドアに最適のクルマじゃないか!」と判断するのは、先走りし過ぎ。というのも、ハイラックスのボディサイズ5340×1855×1800mmと、ホイールベース3085mmが日本のフィールドで持て余してしまうからです。ほとんどUターンを強いられるタイトなカーブが連続する林道では、何度も切り返しをしなければいけないのです。いや、それどころかキャンプ場や海岸などへのアプローチでさえも、脱輪に注意しなければいけないとか!? そんな大きなボディに反して、荷台は1520×1535×480mmと意外に狭くて、モトクロスバイク&水上バイクを積むのに難儀するそうです。そもそもハイラックスの荷台はトラックと同じですから、キャンプ道具などの小物が散乱しないように収納ボックスが必要ですし、雨や雪で濡らさないためにはオプションのカバーなども必須……といった具合に、慣れない人には使い勝手がしごく悪いのです。

 ラグジュアリーな佇まいのハイラックスは、アーバンな風景にも似合うのですが……。街乗りSUVとして乗ろうと思っても、最小回転半径6.4mが災いして、住宅街の狭い路地やショッピングモールの駐車場に入るにはかなりの勇気が必要です。苦労して駐車しても、全長5m超えのせいで駐車スペースからボディ前後が少し飛び出てしまいます。

 さらに追い討ちをかけるのが、キャビンの実用性の低さ! グローブボックスやドアポケットといった収納スペースは乗用車並みなのですが、後席は少しだけシートバックを倒せるとはいえほぼ直角と、乗用車の快適さとはほど遠いのです。そのうえディーゼルターボのパワフルなエンジン音が遠慮なくキャビンに入ってくるので、ロングドライブはキツいかもしれません。

 トヨタ・ハイラックスの実用性の低さをたくさん並べてしまいましたが、決して悪いクルマと断言しているのではありません。4ドアのキャビンと荷台から成るピックアップトラックとしては日本で唯一、新車で正規販売されているのはこのハイラックスだけ! そのハイラックスの性能や機能を使いこなすことができる人にとっては、かなり魅力的なSUVであることは間違いありません。


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