60年前のランクル40にランクル70の中身で乗れる! トヨタ車体が奇跡の融合を実現した【東京オートサロン2023】 (2/2ページ)

ランクルをもっと盛り上げたい! それが私たちの夢です!

 前置きが長くなりすぎたので本題に入ろう。

 そう、「アイドル的存在のランクル40のボディを歴代最高峰であるランクル70のフレームに載せよう」という夢の計画はすでに実行に移されており、そのプロトモデルが今回の東京オートサロン2023でお披露目されたのだ。

 紹介するのは、ランクルの企画から開発まで行っているトヨタ車体と、海外向けのランクルへの架装を手掛ける東海特装車が一体となって運営することを予定している「ランクルBASE」が、先陣を切って行ったプロジェクトだ。

 ランクルを知り尽くしたのプロ集団が、70のラダーフレームをはじめとしたエンジンやミッションに、40のボディをドッキングさせ、圧倒的信頼性と独特なキャラを融合させるというまさに究極の1台だ。ランクルを手掛けるトヨタ車体だからこそできる芸当。今回はこのモデル関する詳しい話を、トヨタ車体では商品事業企画部、ランクルBASEでは店長を勤める三浦さんにうかがった。ちなみに三浦さん自身もランクルのオーナーで、愛車は80ランクルだという。

 まず第一に、ランクルとはいえまったく別の車種である40系と70系のボディとフレームが合体できるのか? というところだが、結論から言えば結構簡単に合体できるとのこと。これは40系のショートボディと70系のショートボディの全長があまり変わらないことがポイントだそう。

 ただし、チューニング業界で言われる「ポン付け」とまではさすがに行かず、フレームの位置やステアリングラックの位置などは厳密には合っていないという。また、ラジエターのコアサポートも位置が合わないそう。極端な話をしてしまえば、フレームを切ったりなんなりすれば解決する話なのだが、ランクルBASE側では「70の信頼性は絶対なので、フレームを切るなんて言語道断!」というアツく堅いポリシーのもと、フレームにはボディを載せる際の加工以外はほとんど手を入れていないという。

 なので、ラジエターを収めるために今後は40のボディを若干延長することで解決する方向に持っていくという。そのほかにも若干ボディ側の加工を考えているんだとか。

 車内はかなり綺麗にリメイクされているが、一部を除いてほとんどがランクル40のものをそのまま使う形となっている。シートは新車のランクル40が装備していたであろう色合いになるよう、独自のレストアを行なっているとのことだ。ミッションまわりはランクル40とランクル70では少々合わないということで、この辺りは切り貼りしている。しかし、言われなければわからないクオリティには脱帽ものだ。

 と、こだわり満載のこの夢のようなランクルが誕生した背景には、3度の飯よりランクルが好きという社員が集まる、トヨタ車体の人たちが「自分たちが欲しいランクルを作りたい!」「ショップなどと一緒になってランクルをもっと盛り上げたい!」という夢が、今回のプロジェクトの原動力だという。

 なので、1月にプレオープンをし、年央に正式オープンを予定しているランクルBASEでは、ユーザーの声を直に聞いて、どんどんフィードバックして商品に生かしたいというビジョンもあるんだとか。極端な話、今回はランクルが主役となっているが、ユーザーがトヨタのクルマを使ってやりたいと思ったことはなんでも相談を受けて、一緒にその理想を叶えるお手伝いの領域にまで、将来的にできたらという目標もあるそうだ。

 チューニングショップなどではできない、トヨタ車体”ならでは”の価値を模索する記念碑的モデルと呼ぶこともできるだろう。三浦さんは「トヨタ車体は現在、”ならでは探し”の真っ只中です」と語ってくれた。

 ちなみにこの40ボディのランクル70、「ナンバーって取れるの?」と気にする人が多いのではないだろうか。結論から言うとナンバー取得は問題なく可能だ。どういったカラクリかというと、ランクル特有のラダーフレームにそのヒントがあるという。

 じつはラダーフレームの車両はナンバー取得の際に「ベアシャシー」が一番重要視されるそう。なので、ベアシャシーの年式にあった法規に則った装備があればなんら問題なく公道に出られるというのだ。つまりこの車両は、車検証では、形式や車体番号は70ランクルとして扱われるということになる。ランクル40のボディや灯火類を活かしつつ、ベースのランクル70の年代に各所が適合する仕様に改造すればOKなのだ(もちろん手間は掛かるが)。代表例ではシートベルト、フロントウインドウなどがランクル40のままでは難しいそう。ただ、大規模改修は不要とのことで、これはラダーフレームのクルマでしかできない裏ワザと言えよう。

 展示パネル上部にある「公道走行不可」の文字は、単に前述したラジエターがないからという呆気ない理由だった。ランクルBASEでは、公道デビューまでを想定して今後マシンをブラッシュアップしていくそうだ。

 オートサロン初日に実際に購入を前向きに考えている方もいらっしゃったそうで、注目度の高さが窺える。ただ、ここで注意していただきたいのは価格だ。ランクル40の中古は結構な高額プライスとなっているほか、ランクル70も同様にプレミア価格に近い状態で推移している。それに架装費用などを入れたら、この1台を手に入れるのにどれほどの費用が必要なのか、なんとなく答えは出るはずだ。どちらかをすでに持っているユーザーならまだいいが、ゼロベースで製作となると、2台もランクルが必要なのだ。一般向けのプランとして設定する予定はあるとのことなので、ランクルBASEでは製作の手順などがある程度決まったら受注を開始して、年間数台手掛けられたら……と現段階での理想を語ってくれた(架装自体は結構簡単なんだとか!?)。

 ランクル40とランクル70の融合モデル以外に、ランクルBASEのブースでは、大人気で納期が4年以上と言われているランクル300をベースとしたカスタムモデル「ランドクルーザーTLC Custom」を展示していた。こちらは、現在開催中のダカールラリーに出場しているマシンの雰囲気を落とし込んだコンセプトモデルで、ホイールやシュノーケル、セミバケットシート、デカール(参考出品)を装備しており、スポーツ感溢れるランクル300になるように、ランクルを知り尽くしたランクルBASE渾身の1台だ。

 実際にダカールラリーで使用しているパーツメーカーと同じアイテムというのもポイントだ。ランクル300のオーナーであれば、デカールと一部パーツ以外はまったく同じ仕様でオーダーできるそう。

 なお、今回のダカールラリーはランクル300としては初の出場となるとともに、優勝すれば10年連続チャンピオンという偉業を成し遂げるレースでもあるという。トヨタ車体は例年以上に力が入っている。そういったこともあり、このランクル300は記念モデルという扱いでもあるのだ。

 なお、トヨタ車体では「土曜日出勤を実施しており、1台でも多くのお客様にランクル300を早くお届けできるよう尽力しています」と、今回の取材を通して工場の現場の様子を少しうかがうこともできた。

 最後の1台は、コンビニなどの宅配でお馴染みのコムスをベースとしたシティコミューター「Fun・COMエクスプローラー」だ。こちらは、商売道具感漂うコムスを、街中を格好良く走れるようカスタムしたモデルで、最終的には市販を予定しているという。

 あえて中古のコムスをベースに選ぶことで費用を安く抑えられるほか、循環型社会への貢献も考えての仕様なんだそう。いかにもコンセプトカーのような見た目ではあるが、刈谷ナンバーを取得済みで、このまま公道走行OKだという。

 トヨタ車体が営むランクルBASEでは、ユーザーの声を第一に、ランクルをもっと盛り上げるためにこれからもさまざまなイベントや車両開発を行なっていくとのことなので、ランクルファンは今後の動向も要チェックだ。

 今回紹介したランクル40とランクル70がひとつになったコンセプトモデルや、ランクル300やコムスのカスタムカーも1月15日(日)まで開催中の東京オートサロンで見ることができるので、興味あるユーザーは会場に急げ!


WEB CARTOP 井上悠大 INOUE YUTAI

編集者

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