「オリジナルこそ旧車の命」とはいえ便利さには代えがたい……旧車乗りの頭を悩ませるイジるかどうかの10+αのポイント (1/2ページ)

この記事をまとめると

■旧車オーナーは「オリジナル派」か「カスタム派」で分かれることがある

■純正パーツを保護するためにあえて社外品にするケースもある

■最近はメーカーなどが復刻パーツなどを再販するケースが増えてきている

オリジナルを取るか利便性を取るか

 旧車の世界では「当時、工場からラインオフした状態に近ければ近いほど価値が高い」とみなされます。内外装のコンディションはもちろんのこと「無事故であるか」「当時の塗装のままのノンレストア車両であるかどうか」や「生産時に車体に搭載された”ナンバーマッチングエンジン”かどうか」「取扱説明書や純正工具がそろっているか」も極めて重要なポイントです。

「当時モノ=フルオリジナル」が至高なのはわかるけれど……

 明日、現行型マツダ・ロードスターが納車されるとします。ピカピカの新車です。納車時の状態を維持しつつ、手渡された付属品などを捨てずにいれば、20年後にはそれ相応の価値になっている可能性があることを意味します。

 しかし、なかなかそういかないのも事実。それだけ「生産時」「納車時」の状態を維持できるクルマが少ないからこそ、数十年後に「奇跡の個体」とみなされ、価値があるとみなされるわけです。クルマである以上、使うことが大前提ですから、「奇跡の個体」はイレギュラーな形で使用(あるいは保管)されたわけです。

探すといろいろある!? やむを得ないカスタム

 昭和の時代に作られた旧車を令和の時代に乗るには、多かれ少なかれ「どこまでやせ我慢するか」が求められます。しかし、背に腹はかえられないのも事実。

 そこで、可能な限り、できるだけ最小限に抑えたカスタムを行うことになるのです。旧車オーナーを取材していて目に留まったものを含め、いくつかの例を挙げてみました。

ETC

 装着率は限りなく100%に近いであろうカスタマイズの筆頭格といえばETC。NEXCO東日本が発表しているデータによると、令和4年11月時点でのETC利用率は93.0%(ETC2.0利用率・30.6%もこの数値に含まれる)に達しています。とくに、左ハンドル仕様の旧車ともなれば、1度この便利さを知ってしまったら元には戻れません。

 ETCは必需品ではあるけれど、見えないところに本体を隠しておきたい。そんな旧車オーナーはダッシュボードの奥やグローブボックスの中など、わざわざ見えにくいところに忍ばせているケースも少なくありません。

スマートフォンフォルダ

 2021年の時点で、いまや8割の世帯が所有しているというスマートフォン(総務省の統計)。クルマ好きが10人集まったら、ほぼ全員がスマートフォンを使っているとみて間違いないほど、いまやメジャーなアイテムとなりました。

 さらに、Google MapやYahoo!カーナビなど、スマートフォンアプリを活用してカーナビ代わりに使っている人も多いはず。パケット通信費と携帯電話の電波が届く範囲であれば、本家カーナビがなくてもこれで充分というくらい使い勝手も良好。ありがたいことに、地図の更新も自動的に行ってくれてしかも無料。便利な世の中になったものです。

 これはガラケー時代から続くテーマではありますが「携帯電話を車内のどこに置くか」。それぞれ工夫されていると思われます。なかでも旧車オーナーともなれば「カーナビとして使いたいけれど、スマートフォンフォルダは付けたくない」と考えている人もいます。そこで、マグネットで固定する方式のスマートフォンフォルダを入手するなど、今日も実用と己の美学の狭間で葛藤しているのです。

ドライブレコーダー

 煽り運転や当て逃げ、盗難などのトラブル時の映像証拠として認知されつつあるドライブレコーダー。ソニー損保が2022年6月に公開した統計によると、ドライブレコーダーの搭載率は49.3%。この数値はまだまだ伸びそうな気配があります。取材を通じてお会いした旧車オーナーの人たちも「気になるけれど、どうしようか迷っている」というケースが多い印象です。

 ETCとは異なり、そもそも存在を隠すことが難しいアイテムでもあります。むしろ「ドライブレコーダーを装置しているぞ!」と周囲に知らせる役目も担っているわけですし……。「運転するときだけシガライターから電源を引っ張ってきて、ちょっとカッコ悪いけれどコードむき出しで使っている」というケースもチラホラ。

 ちなみに、筆者の仕事仲間は中古のスマートフォンと市販のクランプを入手して、愛車であるシトロエン2CVに装着。「必要に応じてカメラモードで動画撮影をする”簡易ドライブレコーダー”」として利用しています。ちょっと不便さはありますが、型落ちのスマートフォンを撮影用のカメラと割り切った使い方は、意外と盲点といえるかもしれません。

エアコン

 旧車オーナーとクルマにとって苦手な季節といえば夏、猛暑です。周囲のクルマはエアコンをガンガンに効かせて、こちらは窓全開……。一応、市販の小型扇風機もまわしてみるものの、熱風にしかならない(笑)。高温多湿ななかでもエアコンレス(あるいはほとんど効かない)の旧車に乗り、移動しなければならないときは苦行でしかありません。

 暑くてもフロントガラスが曇る雨の日でも臆することなく旧車に乗りたい。そういったオーナーのために「汎用のエアコンキット(カークーラーキット)」が存在します。

 このキットを装着すればエアコンがガンガンに効くかというと、クルマ側が拒絶反応を示してしまうこともあり……根気強くトラブルシューティングしていくか、徒労に終わってしまうケースもあるようです。


松村 透 MATSUMURA TOHRU

エディター/ライター/ディレクター/プランナー

愛車
1970年式ポルシェ911S(通称プラレール号)/2016年式フォルクスワーゲン トゥーラン
趣味
公私ともにクルマ漬けです
好きな有名人
藤沢武生

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