「オリジナルこそ旧車の命」とはいえ便利さには代えがたい……旧車乗りの頭を悩ませるイジるかどうかの10+αのポイント (2/2ページ)

あえて社外品を選んで純正パーツを維持するという方法も

タイヤ

 おしゃれは足もとからなんていいますが、これが意外に悩ましい問題。オリジナル志向の旧車オーナーであればなおさらです。……それは「当時モノのサイズのタイヤがない問題」。かつては定番でも、いまや需要が減って絶版になったサイズ、そしてタイヤの銘柄が旧車オーナーにとって悩みどころのひとつです。

 もちろん、当時のサイズや銘柄にこだわらなければ、ほかのタイヤで代用できます。しかし、当時の雰囲気を醸し出すには肉厚のタイヤや、独特のトレッドパターンも大事な演出ポイントのひとつ。最近ではタイヤメーカーが復刻させたり、数がまとまると再生産するケースもあるので、オリジナル志向のオーナーにとっては朗報といえそうです。

ヘッドライト

 旧車といえば、ヘッドライトが暗い! 現代のLEDやHIDヘッドライトに慣れてしまった身にはなおさらそう感じるものです。夜間やサーキットなどでもガンガン走りたいということで、社外品のハイワッテージバルブや、キセノンヘッドライトに交換する旧車オーナーもいます。

 このヘッドライト問題……ほんのわずかな違いではあるのですが、クルマの表情を激変させてしまうことがあります。人もクルマも、目って大事なんですよね。

ダッシュボードカバー

 旧車オーナーを悩ます問題のひとつがダッシュボードのヒビ割れ。長年、激しい温度差と紫外線にさらされた結果、経年劣化で割れてしまうのです。ネットオークションなどで当時モノのダッシュボードを入手することもできますが、モデルを問わず需要があるため、また、コンディションの良いダッシュボードが少ないため、コンディションの良いモノは高額取引となってしまっています。

 そこで、背に腹はかえられないということで、ダッシュボードに市販のカバーを被せ、少しでも紫外線からの攻撃を避ける必要があります。「あくまでも暫定処置として」。雨の日は乗らないのはもちろん、紫外線が強くなる時期もなるべく乗らない……という旧車オーナーもチラホラ。愛車のことを想うあまり、つい過保護になってしまうんですよね……。

社外シート

 純正シート保護のため、あえて社外品のものに交換するオーナーも少なくありません。どれほど丁寧に扱っていたとしても、シート本体の生地と衣類がこすれあうことは避けられません。その結果、破れたり、穴が空いてしまうのです。また、経年劣化に伴い、シートの生地そのものや中身が痛んでしまうこともしばしばあります。

 当時モノのシートをリペアするにしても、革や布の生地が手に入らないことが多く、コンディションを維持するなら車体から取り外して保管するのがベストです。ただし、湿気の多い場所に保管するとカビだらけになることもあり、これでは本末転倒です。除湿剤を置いて、適度な湿度を保つことも重要です。

リプロダクション品

 メーカー純正のオリジナルがベストなのは知っているけれど、欠品または製造廃止でモノがない。でも、リプロダクション品なら手に入る! ということで代用するケースも少なくありません。いや、リプロダクション品が存在するだけでもありがたい話。それはつまり「需要がある=人気モデル」の証でもあります。

 旧車でも、フォルクスワーゲン・ビートルやポルシェ911など、輸入車の一部のモデルは豊富にリプロダクション品が選べる場合もあります。日本車でも、最近では、専門店がリスクを承知で自らリプロダクション品の型を起こし、生産・販売するケースも増えつつあります。この覚悟と企業努力には頭が下がる思いです。

レストモッド

 諸説あるようですが「レストア」と「モディファイ」をかけあわせたのが「レストモッド」といわれています。古いクルマをベースに、現代、あるいはベース車の後継モデルなどの部品、デザインテイストなどを盛り込み、独自の解釈で作りあげられた1台です。

 内外装をレストモッドしたり、エンジンやトランスミッションなどの機関系を後継モデルなどから流用したり、作り手のセンスとこだわりが問われます。

番外編:EV化

 これは究極というか、カスタムというよりも維持・延命させるうえで最後の手段というべきか……。旧車のEV化です。心臓部を内燃機関からバッテリーへと置き換えるのです。日本のみならず、世界各地でこの動きが広がりつつあります。

 確かに「ガワ」だけはそのまま。しかし、ボンネットを開けると……。この事実をオーナー自身が「是」と思うかどうか。筆者も1970年製の旧車を所有していますが、個人的にはかなり複雑な心境(お察しください)です。

まとめ:オリジナルでもそれ以外でも現存することが大事

 旧車……すなわち絶版車ともいえます。今後、現存する台数が減ることはあっても、増えることはまずありません。コンディションの良い旧車が海外へと流れていくケースも多く、1度、日本を離れた個体が再び帰ってくる可能性は極めて低いといわざるを得ません。

 なかにはナンバーを切って、自宅のガレージや庭などで密かに復活の時を待つ旧車もあるでしょう。動体か静態か。オリジナルかそれ以外か。考え方は人それぞれだと思われますが、1台でも多く、後世に残ってくれることを願うばかりです。


松村 透 MATSUMURA TOHRU

エディター/ライター/ディレクター/プランナー

愛車
1970年式ポルシェ911S(通称プラレール号)/2016年式フォルクスワーゲン トゥーラン
趣味
公私ともにクルマ漬けです
好きな有名人
藤沢武生

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