スカイラインの影に隠れたもう1台の「GTR」! いすゞ「ベレットGTR」の名車っぷりが半端ない

この記事をまとめると

いすゞから販売されていた乗用車「ベレット」を振り返る

ベレットにはスポーツグレードの「GT」や「GTR」というモデルがあった

■レースなどでも活躍し、「ベレ・ジー」の愛称で親しまれていた

名車だらけのいすゞが誇るGTR!

 いすゞはトラック/バスのメーカーだが、かつては乗用車を独自開発し、販売していた。その1台が、ベレットだ。

 ベレットは、トヨタ・コロナや日産ブルーバードと競合するような5ナンバーの乗用車で、技術的な知見とこだわりがあり、たとえばプリンス自動車のクルマのような印象を持つ1台であった。トヨタや日産ではなくあえていすゞのクルマに乗っていることが誇りに思えるようなメーカーでもあったのだ。いすゞ117クーペは、今日でもその知名度は高く、憧れを持ち続ける人も多いのではないか。

 ベレットは、1963年に発売された。そのサスペンションは、当時としては先進的な4輪独立懸架であった。エンジンは、1.5リッターのガソリンと定評の高かった1.8リッターのディーゼルをラインアップ。後者はいすゞ自慢のディーゼルエンジンであった。

 発売を開始した翌1964年にはGTが追加される。1.6リッターガソリンエンジンを搭載したベレットGTは「ベレ・ジー」の愛称で親しまれた。当初に比べ、やや丸みを帯びた姿が流麗であり、多くの人が憧れた。スカイラインも、プリンス自動車が日産自動車と合併し日産スカイラインとなる前には、スカイラインGTがレースで活躍した時代があり、ベレットGT派かスカイラインGT派かと言われるくらい、時代を分け合った車種であった。そしてともに、GTRへの進化を遂げるのである。

 GTの上に位置づけられるのが、このベレットGTRだ。1969年に、レースでの経験を踏まえた車種として発売された。エンジンの排気量は1.6リッターのままだが、それまでのOHV(オーバー・ヘッド・バルブ)からDOHC(ダブル・オーバー・ヘッド・カムシャフト)へ変更され、サスペンションも強化された。日産スカイラインのGTRも1969年の発売であり、同年代の高性能グランドツーリングカーということがわかる。

 その後、いすゞは米国ゼネラルモーターズ(GM)と資本提携し、ドイツのオペルと共通性のあるジェミニを小型乗用車として販売。一時は高い人気を集めた。ほかにも、RV(レクリエイショナル・ヴィークル)のビッグホーンが三菱パジェロと人気を二分した。しかし、2002年にいすゞは国内での乗用車生産から撤退することになった。

 ベレット、117クーペ、ジェミニ、ビッグホーンなど、いすゞが誇る技術と独自性のある車種はいまなお記憶に残る。そのなかでも、ベレットGTRは、高性能グランドツーリングカーとして、いすゞが極めた高性能乗用車を象徴する1台といえるだろう。


御堀直嗣 MIHORI NAOTSUGU

フリーランスライター/2023-2024日本カー・オブ・ザ・イヤー選考委員

愛車
日産サクラ
趣味
乗馬、読書
好きな有名人
池波正太郎、山本周五郎、柳家小三治

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