知れば知るほど驚異でしかない! 中国のEVメーカー「BYD」が日本を席巻する可能性 (2/2ページ)

日本メーカーにとっては大きな脅威となる

 そして2003年に中国国営の自動車メーカーを買収し、自動車産業への参入を開始した。この年は、テスラの設立と重なる。2年後の2005年には早くも日本法人を設立し、15年に太陽光発電事業に乗り出している。

 また、EVバスを2019年に日本に導入するなど、乗用車の前に公共交通への参入を行うことで地盤固めをし、日本市場の様子をつぶさに研究してきたといえるのではないか。そして、いよいよ乗用車販売に踏み切ったのである。

 昨年、日本でのEV発売を発表し、神奈川県横浜市の赤レンガ倉庫で消費者への試乗も行った。その車両はまだオーストラリア仕様ではあったが、ウインカーレバーをハンドルの右側に設定するなど、日本車からの乗り換えを容易にする配慮があった。ここはヒョンデも同様だ。ちなみにほかの輸入車はほとんどが左ハンドルの設定のまま、つまり左側にウィンカーレバーがある。

 EV販売の面では、ディーラーネットワークを国内に設けるやりかたとし、販売店での対応によって身近な感覚で購入、保守・管理できる気配りもある。

 技術では、リン酸鉄といって資源確保の制約が少なく、衝撃に対する安全性にも優れるリチウムイオンバッテリーを採用し、またBYD独自の手法として、ひとつの電極が細長いブレードバッテリーを開発、実用化することで、セル数を確保して一充電走行距離を満たすといった他車との差別化も行っている。バッテリー以外の半導体なども自社で調達できるため、生産の安定性も備えている。

 この先、ATTO3に次いで小型ハッチバック車のドルフィン、上級4ドアセダンのシールといった追加車種の販売も予定されている。それらもATTO3で示された手ごろな価格が設定されれば、国内EV販売の有力メーカーに成長していく可能性もある。


御堀直嗣 MIHORI NAOTSUGU

フリーランスライター/2023-2024日本カー・オブ・ザ・イヤー選考委員

愛車
日産サクラ
趣味
乗馬、読書
好きな有名人
池波正太郎、山本周五郎、柳家小三治

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