中国や欧州は「EVの普及」じゃなくて「EVの充実」のフェーズ! EV元年だとか言ってる場合じゃない日本メーカーの立ち後れ感 (2/2ページ)

「日本車がんばれ!」では済まされない日本メーカーの状況

 一方で日系メーカーは、BEVといえばコンセプトカーやプロトタイプが目立ち、明らかにフェーズの変化に追いついていない様子がうかがえる。ここでも大手メディアの報道は、いままでなら「会場は電気自動車ばかりです」でリポートが終始していたのだが、結びで「出遅れている日本メーカーの逆襲がはじまった」とか、「日本メーカーの今後の動きに注目」といった。いままでとはややニュアンスの異なった表現を筆者は印象的に感じていた。

 単純に「日本車がんばれ!」だけでは済まされない状況に日本メーカーが追い込まれているのは間違いない。「日本はHEVが強いので、現状ではHEVの普及を促進するのが気候変動対策でも現実的」という意見は確かにある意味正論なのかもしれない。ただ、ZEVの普及については、各国の政治的思惑も強くなっているので、何が正しいのかではなく何がより目立つ動きなのかが勝負のわかれ目になってきているように思う。「日本車潰し」や「ZEVで世界の自動車産業の覇権を握る」といった政治的思惑が欧州や中国の動きで見え隠れするなかでは、正論ばかり述べていても置いて行かれるばかりだと感じる。

 ホンダは2027年以降に中国市場で新たに新型内燃機関車を投入しないと明らかにした。アウディもすでに2026年で内燃機関車の新型モデル投入を終了することを明らかにしている。ただ、現状をみるとラインアップにおけるBEVの数の多さはアウディが圧倒的に多い。一方のホンダは、本国日本でもっとも販売している車種はZEVどころかHEVの設定もないN-BOXとなり、その販売比率は極めて高い。このような状況を中国国内ではどんぶり勘定のように物事が進んでいるように見え、それに不安を覚え懐疑的に見ているとの報道もある。

 EUが2035年以降の内燃機関車の販売禁止を撤回したのは、ZEVへの生産移管による雇用問題という側面も大きいと聞く。中国市場だけの話とはいえ、売れ筋モデルは中国現地生産モデルとなるので、2027年以降内燃機関車の新規投入をやめ、2035年以降はラインアップの100%をZEVにするというならば、中国国内でも雇用問題や取り引き先の企業への対応というものも同時進行で進めるべきと考えるが、どうもそこがなかなか見えてこない。単純に切り捨てるつもりなのだろうか。

 日本メーカーにもそれ相応の思惑があって現状があるものと考える。しかし、日本は別としても「なぜ日本メーカーはBEVが少ないのだろう、積極的に販売したいのに」と考えている販売ディーラーが、日系ディーラーの経営から完全撤退することはなくとも、韓国系や中国系メーカーの新車ディーラーの経営に新たに乗り出し、販売比重をそちらに置かれてしまうということは世界的に今後目立ってくるかもしれない。販売現場レベルでは、BEVは注目されているし扱いたいのは当たり前の話。メーカーだけで納得するのではなく、どんぶり勘定に見られないような積極的な情報発信など、まわりで協力してくれているパートナーへの配慮が足りないように筆者は見えているのも、単にBEVラインアップに出遅れているだけではない不安要素のひとつとして捉えている。


小林敦志 ATSUSHI KOBAYASHI

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