8世代もあるのに全部スゴイってどういうこと? VWゴルフがいつの時代も世界中で「ベンチマーク」にされる裏にある「オーバークオリティ」な作り方 (1/2ページ)

この記事をまとめると

ゴルフはVW(フォルクスワーゲン)のコンパクトカー

■世界中のコンパクトカーがベンチマークにしている

■すでに8代に渡って生産されているがどの世代もベンチマークにされる理由を解説

ゴルフをベンチマークにするクルマが多数

 世界中のコンパクトカーがベンチマークにしているクルマと言われているのが、VWゴルフであったり、VWポロだ。筆者が国産車の新型が出たとき、開発陣に「ベンチマークにしているクルマはありますか?」と聞くと、たとえばホンダ・フィット(先代)はVWポロ(先代に当たる5代目)と公言していたし、最近のコンパクトカーでもベンチマークをゴルフVIIに照準を合わせたクルマは少なくなく、走りの良さに定評ある軽乗用車もまた、VWポロをベンチマークにしていたりする。意外な話として、最新の日産Mクラスボックス型ミニバンの新型セレナは、パワーステアリングのラックマウントとフロントサスペンションに関して、ゴルフ7をベンチマークにしていると聞いている。

 もちろん、国産車だけでなく、実力派の欧州コンパクトカーも、ベンチマークとは公言しないものの、歴代のゴルフを横目で見ながら開発していることはまず間違いないところなのである。

 では、VWのクルマ、とくにゴルフが世界中のコンパクトカーを作る自動車メーカーから一目置かれているのは何故なのか? そのきっかけのひとつが、ゴルフV(ファイブ)で採用された工場のレーザー溶接ラインへの莫大な投資であり、全モデルに超高張力鋼板を始めとする先進素材を積極的に採用し、高剛性と軽量化を高い次元で両立しているところではないか。

 いや、それだけではない。VWのラインアップの中でもっとも数が出る車種ゆえに、VWの先端技術をいち早く取り入れることができるメリットも絶大だ。さらに、ボディパネルごとに剛性を変え、製造ラインを効率重視ではなく、手作業を含めた工程数の多いものにするなど、目に見えない部分のこだわりこそがVWのクルマ作りの文化そのものであり、一般ユーザーはもちろん、自動車のプロにも「いいクルマだ」と評価される大きなポイントなのである。

 たとえば1990年代から今に至る、ボディパネルの錆止め亜鉛メッキ工程だが、亜鉛メッキを施したパネルは、その後溶接することで溶接した部分の錆止め効果が薄れることになる。そこでポルシェが初採用し、アウディ、VWへと受け継がれたのが、ホワイトボディを亜鉛のプールにどぶ漬けすることで可能になるフルジングボディだった。錆穴保証12年と言う保証制度が実現したのも、そうした先端技術をポルシェやアウディとともにいち早く導入できたからこそである。


青山尚暉 AOYAMA NAOKI

2023-2024日本カー・オブ・ザ・イヤー選考委員

愛車
フォルクスワーゲン・ゴルフヴァリアント
趣味
スニーカー、バッグ、帽子の蒐集、車内の計測
好きな有名人
Yuming

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