道路交通は「国ごとにバラバラ」じゃ「カオス確実」……というわけで決められたウイーン条約とジュネーブ条約って何?

この記事をまとめると

■道路交通に関する世界的な条約として、ジュネーブ条約とウィーン条約が存在する

■ウィーン条約は大陸で隣接する国々で国境を越えて移動する機会が多い国が採用している

■ジュネーブ条約では自動運転の実用化に関して難しい側面を持っている

道路に関する法律は世界で2パターンがある

 道路交通に関する世界的な条約として、ジュネーブ条約とウィーン条約がある。

 ジュネーブ条約は、1952年に先に発行し、欧州、南北アメリカ、中近東、アフリカ、アジア、大洋州など、世界に広く加盟国が広がっている。

※写真はジュネーブ国連本部

 これに対し、ウィーン条約は1968年に締結されたが、加盟する国は欧州やロシア、そしてアフリカの一部地域で、北米や日本、大洋州のオーストラリアやニュージーランドは加盟していない。

 道路交通に関する国際条約は、クルマが世界各地域を走る移動手段として、国境を越えても不都合のない運用が求められるため、ある一定の共通した規則が必要になる。

 そのうえで、加盟国の地域が限られるウィーン条約は、その加盟地域を見ると、大陸で隣接する国々が国境を越えて移動する機会が多そうなことがわかる。その際に不都合が生じにくいよう、道路標識や信号に関する規定も定めている。クルマ以外でも、EUとして通貨の共通化や、国家間の関税の免除などが行われている欧州では、国境を越えた途端に道路標識や信号の表示が変わったのでは、安全な移動が難しい。こうした標識や新信号に関する条約が重要性を帯びる。

 一方、たとえば米国は、連邦政府(国)と州(地域)によって、交通に関して取り扱いの分野をわけている場合があり、ウィーン条約のような統一が難しい側面がある。

 日本では、クルマに乗ったまま国境を超える機会は、フェリーを使って渡韓するような場合を除いて限定的で、標識や信号機の運用も、ウィーン条約を結ぶ国々と異なる面がある。しかし、クルマでそのまま移動しなくても、海外から来日した人が日本でクルマを運転する機会があると同時に、日本から海外へ出て運転する機会もあるわけで、標識や信号機の運用などは統一されている方が好ましいはずだ。

 昨今では、自動運転の実用化に関し、ジュネーブ条約では現状の規則に従うと市場導入が難しいが、ウィーン条約では実用化へ結びつけられる条文となっている。そして日本も、条約加盟しているかどうかは別に、それらを参考に自動運転の実用化へ向けた動きが起きている。

 クルマという商品は世界的に販売されるものだから、可能な限り共通の規則に従った取り組みが好ましいだろう。そして、国独自の規則である必要がある点については、きちんと考察し、精査すべきではないか。今日の、グローバル化された時代には、スマートフォンなどほかの商品にも通じることだ。

 消費者がいつでも商品を安全に使い、運用できるための配慮は、規則を守るだけでなく、メーカーの良心が問われることでもある。消費者のためという言葉を自らの都合で利用するのではなく、社内事情で品質や安全が左右されないものづくりが求められる。


御堀直嗣 MIHORI NAOTSUGU

フリーランスライター/2023-2024日本カー・オブ・ザ・イヤー選考委員

愛車
日産サクラ
趣味
乗馬、読書
好きな有名人
池波正太郎、山本周五郎、柳家小三治

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