ウデ1本で新車を売りまくるエースセールスマンが洗車係の閑職に……すっかり様変わりした新車販売スタッフに求められる能力 (1/2ページ)

この記事をまとめると

■某大手中古車販売店の騒動は昭和の時代を思い出させる

■ひと昔前の自動車販売店の給料は歩合制で営業成績によって手取り額が大きく違っていた

■中古車販売店員以外にも社会の変化で稼ぎにくい仕事になってしまった例は多い

昭和の自動車販売店にはエーススタッフがいた

 まだまだ某中古車販売&買い取り大手の話題が世の中を席巻しているなか、この原稿を書いている。保険の水増し請求にはじまり、街路樹への除草剤散布など、とにかく話題がつきない日々が続いている。

 新車販売業界関係者に話を聞けば、「規模と程度は桁外れだが……」と前置きしたうえで、「あそこがいま問題視されていることの多くは、業界的には新しくも珍しくもないことがほとんど」と多くの人が語ってくれる。とはいっても同じこととはいえ、全国展開している大手企業で、社会的受忍限度というか、とにかく度を越した数々の行為は問題ありと見るしかないといえよう。

 筆者は一連の報道を見ていると、今回の騒動から昭和臭というものを強く感じる。自動車販売業界だけでなく、世の中に「ガバナンス」だの「コンプライアンス」といった言葉が浸透していなかった昭和の日本にあった、ある種の懐かしさを強く感じている。

 昭和のころのホームドラマなどをCS放送などで令和のいまに再度見てみると、いまどきならば「女性蔑視」といわれかねないセリフの連続に思わず「やばくないか」と、筆者のような昭和世代のオッサンも感じてしまう。そんな昭和の時代にはどうってことがなかったことを、いまだ続けるだけでなく、手広くやってしまえば大騒動になってしまうのも納得である。

 いまどきの、とくに日系メーカー系新車ディーラーのセールススタッフでは、給料のなかで基本給の占める割合が多いと聞く。しかし、過去に比べて基本給が手厚くなっているのかと思えば、じつは歩合給が減ったことによって基本給の比率が高い状況になっているだけのようだ。

 若い世代は、そもそも入社時から歩合給比率が高くなかったし、「ガンガン売りまくって歩合を稼ぐ」といった生き方にもあまり興味がないようだが、古い世代のセールススタッフは歩合給の少ないいまは不満も高いようだ。

 あるメーカー系ディーラーのベテランセールススタッフに「いま話題の大手中古車販売&買い取り店へ転職して歩合給をかせぎまくったら?」と冗談半分で話をふると、まんざらでもない返事をされて困ってしまった。

 バブル経済が崩壊し2000年代ぐらいに入ると、新車販売台数の頭打ちも目立っており、まずは台当たり利益を稼ごうという方向になった。それまでは新車をガンガン売るトップセールススタッフは、各ディーラーのヒーローだったが、洗車係などの閑職に追いやるところも出てきた。

 当時、とにかく台数を売りまくるトップセールススタッフのなかには、薄利多売型、つまり値引き販売をガンガン行う人も目立っていた。台数を売っても利益率がそれほど高くないため、車庫証明の申請などの納車雑務を若手セールススタッフに補佐としてやれせていたような店舗も多かった。店舗単位で見ると、ひとりのトップセールススタッフがいる店舗と、スタッフ全員でそこそこ販売する店舗では、後者のほうがトータルとして効率が良いとされ、トップセールススタッフは英雄から陥落することとなったのだ。

 20世紀末あたりまでは、まだセールススタッフも業界内で転職を繰り返していたが、2003年に個人情報保護法が施行されると事情が変わった。セールススタッフが短期間で転職を繰り返せたのは、そのセールススタッフが管理する顧客データをそのまま転職先のディーラーが使えたことが大きい。だからセールススタッフ、とくにベテランの転職はウェルカムであったのだ。


小林敦志 ATSUSHI KOBAYASHI

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渡 哲也(団長)、石原裕次郎(課長) ※故人となりますがいまも大ファンです(西部警察の聖地巡りもひとりで楽しんでおります)

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