ビッグモーター事件は「直接取引のない」ユーザーも被害者! この先も広がり続ける「不正の余波」 (1/2ページ)

この記事をまとめると

■ビッグモーターの不正が連日話題となっている

■わざとクルマを傷つけたり、過剰な修理費を保険会社に請求していた例が見られた

■店舗前の街路樹に除草剤を撒いたりして店舗の外観をよくしようとしていた事案もあった

噂されていた数々の不正が明るみに出始めた

「売れすぎてクルマが足りません!」というテレビやラジオのCMでもお馴染みとなった、中古車販売大手のビッグモーター。ユーザーにとって親切で有益な取引ができるお店、というイメージを持っていた人も多いと思いますが、それが一変する不祥事が発覚しました。

 発端となったのは、2021年秋の内部告発だったと言います。損害保険業者の団体に、ビッグモーターが過剰な自動車の修理をし、その費用を保険会社に請求しているという内容の内部通報があり、それを受けて損保ジャパン、東京海上、三井住友海上の3社がサンプル調査を実施。その結果、水増し請求の疑いのある案件は80件にものぼったといいます。

 しかし、その時点では、ビッグモーター側は「手続きミスによるもの」などと報告し、不正を認めませんでした。そのため、さらに調査を進めたところ、次々と不正が発覚して証拠も見つかるに至っています。

 一方でビッグモーター社内においても、2022年1月に「不要な板金・塗装作業を強いられている」とする内部告発がありましたが、証拠写真や書類が揃っていたにもかかわらず、それに関する調査は行われず告発はもみ消されたといいます。しかし、次々と発覚する不正に対し、マスコミなど外部の声も高まりを見せ、ついに2023年1月、第三者による特別調査委員会が設置されました。

 現在までに問題となっている不正行為は、まず工場長などの指示による過剰な修理と保険金の水増し請求。実際にはおこなっていない修理をおこなったと嘘の申請をしたり、高額なタイヤを装着したと見せかけて安価なタイヤを装着し、その差額を騙し取ったり、靴下にゴルフボールを入れてボディを叩き、雹害の痕跡をわざと多くしたりといった、詐欺罪や器物損壊罪にも当てはまる行為です。タイヤにわざと釘を刺す、ドライバーなどでボディに傷をつける、バンパーを手で押し込んで潰す、中古の部品を新品部品と偽って装着する、などといった手口も横行していたとのこと。

 さらに、自動車保険の契約数を稼ぐために、展示車両や社用車に販売員が個人名義で保険の契約を行い、保険料が支払われないまま数ヶ月で契約が破棄され、再び同じ車両で保険契約がおこなわれるといった行為がありました。これについては、自動車保険の契約数について月間の目標額が定められており、目標を下まわった販売店の店長が、上まわった店長に現金を支払うという「罰金制度」がビッグモーター社員に課せられていたという背景があります。

 目標を達成できなかった店長は上限10万円をポケットマネーで支払い、目標を達成した店長に分配される仕組みだったとのこと。そのため、こうした架空ともとれる保険契約は、ノルマ達成のために現場が無理強いされていたのではと考えられています。


まるも亜希子 MARUMO AKIKO

カーライフ・ジャーナリスト/2023-2024日本カー・オブ・ザ・イヤー選考委員

愛車
MINIクロスオーバー/スズキ・ジムニー
趣味
サプライズ、読書、ホームパーティ、神社仏閣めぐり
好きな有名人
松田聖子、原田マハ、チョコレートプラネット

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