「認知症を患う高齢者が新車を契約……」新車ディーラーを悩ませる少子高齢化問題 (1/2ページ)

この記事をまとめると

■少子高齢化や物価高によってクルマを持つ人が減り新車が昔ほど売れなくなっている

■高齢オーナーの割合が増えており、相続面での手間やトラブルが問題化している

■認知症の人が勝手にクルマを契約したり、安全装備を使いこなせないなどの問題も露呈している

国民の高齢化によってクルマの販売現場がピンチに

 少子高齢化といわれて久しいが、その影響は新車販売現場にも及んでいる。それは自動車所有者の高齢化である。シェアリングになんの抵抗もなく、コスパ(コストパフォーマンス)を重視する若い世代ほどクルマを持とうとはしない。

 そもそも新車は30年間給料の上がらなかった、いまの日本の世の中では以前より高い買い物であるし、中古車とて納得のいくものを探そうとすれば、それなりの価格になってしまう。それになんといっても若年層ほど任意保険料が高すぎるというのが大きな問題となっている。

 賃貸住宅に住んでいれば駐車場代、さらにガソリン代など、クルマにかかる費用はかなりの負担となるのだ。18歳になったら免許を取ると誰もが思っていた昭和に青春時代を送った筆者のようなオジサンなら、免許を取ったらすぐにクルマを持つのも半ば当たり前だったので、ある意味クルマの維持費用は生活費の一部みたいにとらえ、格好いいクーペをフルローンで買い、カップラーメンで日々を過ごすという人も多かったが、いまどきの若者にはとても理解されるものではないだろう。

 運転免許を持たず、クルマも持たない若者像というのは都市部だけの傾向かと思いがちだが、地方部でもクルマと免許をもっている友だちと一緒に行動することで事欠かないということもあるようだ。

 つまり、高齢を理由に運転免許の自主返納や本人死亡などにより、クルマの所有をやめる人の数と新たにクルマを持とうとする人の数は、人口動態を見ても、新たにクルマを持つ人のほうが少ない。そのため、新車ディーラーでは終活ならぬ終車活でいろいろ動くことも多くなってきたのである。

 一番面倒なのは、所有者が死亡したにも関わらず死亡者名義の車両が残されてしまった場合。本人死亡が確認できると、今度はそのクルマを相続することになった相続人が、ほかの相続人全員から相続放棄の署名・捺印を集めないと車両の名義変更はできないとのこと。現場で聞くと、この手続きをできる範囲でディーラーがバックアップすることもあるそうだ。

 事情通は「現場では寝たきりなど身体的にクルマの運転が不可能になった段階、つまり生前に名義変更するようにと勧めているようです。個人情報の取り扱いが厳重ではなかった時代には、死亡後1週間は行政のデータ上では死亡とされないので、その間に必要書類をディーラーで集めて、生きていることにして名義変更したこともあるようです」と話してくれた。いまでは、人生最後のクルマと覚悟したときに、個人向けカーリースで乗るようにしている人も目立っているとのこと。

 カーリースなので死亡しても車両返却するだけでOKであり、メーカー系個人リースのなかでは中途解約金を取らないところもある。セールススタッフのなかには、やんわりと高齢のお客に個人向けカーリースを勧めることもあるようだ。


小林敦志 ATSUSHI KOBAYASHI

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