そんじょそこらの「マイクロカー」とはひと味違う! もう飼いたいレベルのカワイイ「商用バン」まで揃えたゴッゴモビルがすごい (1/2ページ)

この記事をまとめると

■ドイツで自動車生産をしていたグラース社が生み出したマイクロカーが「ゴッゴモビル」だ

■2ドアセダンや2ドアクーペのほかにも商用バンも存在していた

■オーストラリアのファンが「ゴッゴモビル」をベースに製作したスポーツモデルが輸出されていた

スクーターをそのまま4輪モデルにしたようなゴッゴモビル

 メッサーシュミットやイセッタが生まれ、走りまわったドイツこそ、マイクロカーの本場といっていいでしょう。全盛期、すなわち1950年代は戦争の痛手から回復している最中でもあり、資材や工数にアドバンテージがあるマイクロカーは、国民にとってなくてはならない存在だったといっても過言ではありません。それゆえ、前述のツートップ以外にも魅力的なマイクロカーが存在することは言うまでもありません。今回ご紹介するゴッゴモビルにしても、ドイツで人気を博したのちにはオーストラリアでも人気の的となるなど、なかなか侮れないキャラクターなのです。

 ゴッゴモビルの生みの親は、すでにドイツ国内で自動車生産に実績のあったグラース社。クラシックスクーターのマニアなら、1951年製のゴッゴローラーという流線形のマシンを目にしたことがあるかもしれません。ゴッゴの名は、その後4輪のマイクロカーにも引き継がれたわけですが、じつはグラース社の創設者、ハンス・グラースの孫娘の名前というなんともほっこりするエピソードです。

 また、BMWマニアもまたグラースの名は耳タコかと。なんといっても、イタリアのカロッツェリア「フルア」にオーダーしたグラースBMWは販売こそ振るわなかったものの、ゴージャスなボディの意欲作。ハンス・グラースその人は、ゴッゴモビルといい、グラースBMWといい、商品センスにかけては群を抜くものがあったといえるのではないでしょうか。

 さて、5万台近くのゴッゴローラーを売りさばいたグラース社は、1955年には4輪車へとスイッチ。時代的にマイクロカーがブイブイいってた頃ですからね。スクーターに搭載していた125~200ccの2サイクルエンジンの流用もトライされたようですが、結局は250ccへとスープアップ。最終的には400ccと、当時のマイクロカーとしてはかなり強力なエンジンへと成長していきました。

 そして、ゴッゴモビルの名でデビューした最初のマイクロカー「T250」は、2ドアセダン、リヤエンジンで、全長×全幅×全高:2900×1260×1310mmとマイクロカーとしては標準的なサイズ。特徴的なのはエンジン始動で、最初に燃料コックをオープンし、キャブレターに十分なガソリンが行き届いたところでスタータースイッチという、ほぼスクーターと等しいプロセスが必要となっていました。

 マイクロカー全般に言えることかもしれませんが、ゴッゴモビルのデビュー時にいわれたのは「屋根付きスクーター」というざっくばらんなもの(笑)。ハンス・グラースは当時、スクーターで農作業や仕事に向かっていた人々が、雨の際に橋の下などで雨宿りしているのを見てT250を思いついたとしていますから、屋根付きスクーターはずばり核心をついていたわけです。

 もっとも、商品価値を向上させようと1957年には2+2クーペの「TSクーペ」を発表。先のT250の改良版(ワイパーが1本から2本、ウィンドウがスライド式から巻き上げ式に変更など)とともに発売されると、かなりの人気になったようです。エンジンは300ccまで排気量がアップされ、最高出力15馬力と公表されています。

 実際、イギリスの自動車雑誌「The Motor」がテストしたところ、最高速は95.3km/h、0-80km/h加速は27.9秒とマイクロカーにしてはわりと良好なパフォーマンスを記録しています。TSクーペもTセダンと足並みをそろえて排気量アップをしていき、最終的には400ccまで到達。

 この2車種に加え、後述のTLバンを合わせたゴッゴモビルの生産台数はなんと28万台におよぶといいますから、人気っぷりもわかるというもの。また、TSクーペは多くが北米向けに輸出されたことで、アメリカのマニアから大人気を博したそうです。オークションにもアメリカのコレクターから出品されるものが少なくなく、いずれもミントコンディションばかり。相場としてもマイクロカーのなかでは高めといえる2万から4万ドルをキープしており、今後も値上がりこそしても値が下がることはなさそうです。


石橋 寛 ISHIBASHI HIROSHI

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