馬鹿デカイ車体にハイパワーモーターに巨大バッテリーってホントにエコ!? それでもアメリカではEVピックアップが急速拡大中だった (1/2ページ)

この記事をまとめると

■アメリカではピックアップトラックが第一線で売れ続けている

■各メーカーのピックアップトラックにも電動モデルが追加されている

■アメリカを象徴するV8エンジン車を凌駕するほどのパワーを持つモデルも多い

アメリカではピックアップトラックの電動化が進む

 近年では中国を筆頭として、アジア諸国における自動車市場規模の拡大が話題となっているけれど、「自動車大国」といえばやっぱりアメリカだ。国土が広大すぎるゆえに、通勤通学や日常の買い物など、生活するうえでクルマの存在はかかせなく、一家に1台どころか「ひとりに1台」が珍しくない。

 そんなアメリカの自動車メーカーといえば、”かつて”「ビッグスリー」と呼ばれたゼネラルモーターズ、フォード、そしてクライスラーである。”かつて”と記したのは、メーカー別の販売台数で首位ゼネラルモーターズは変わらないものの、それに次ぐ2位がトヨタであり、フォードは3位、そしてステランティスが4位というのがそれぞれ指定席となっているから。アメリカが自動車大国である事実は変わらないが、3大自動車メーカーが新車市場を支配していた時代は大きく変わっている。

フォードの自動車工場の看板

 とはいえ新車販売台数をカテゴリー別に見ていくと、旧ビッグスリーがいまなお圧倒的なシェアを誇っている部門がある。それがピックアップ(トラック)だ。それだけに各メーカーのモデルラインアップも豊富で、コンパクトサイズからインターミディ、そして大排気量のV8エンジンを搭載するフルサイズまで、ピックアップのラインアップは幅広い。

フォードのピックアップトラックの生産工場

 デカくてタフなことが素晴らしいというアメリカを象徴するようなピックアップ市場にも、ついにというかようやくというか、世界的な自動車のトレンドである電気自動車(EV)の波が押し寄せた。ピックアップのカテゴリーで長年トップセールスを記録しているフォードは、2022年に「F-150ライトニング」を発売。するとライバルであるゼネラルモータースも、シボレー・ブランドから「シルバラードEV」、そしてGMCブランドから「ハマーEV」をリリースした。

GMCハマーEV

 北米市場における慣例として、毎年9月以降に発表・発売される車種は翌年モデルと表記されるが、EVピックアップのトレンドは2024年モデルにおいてさらに加速する。フォードはF-150よりひとまわり小さなインターミディサイズの「マーベリック」にEVモデルを設定し、ゼネラルモータースはシボレー・シルバラードEVの姉妹車として「GMCシエラ EVデナリエディション」を発表した。そしてステランティスのラム・トラックスからは、同ブランド初のEVとなる「ラム1500レボリューション」が登場。2024年モデルにおいて、ついにビッグスリーのEVピックアップが出揃うことになる。

RAM1500 レボリューションのフロントスタイリング

 もっとも、トラディショナルで保守的なイメージのあるピックアップカテゴリーにおいて、ここまで急速にEV化が進んだのは、新興自動車メーカーが積極的に攻勢をしかけてきたためだ。EVメーカーの代名詞的存在として知られるテスラは、2019年に「サイバートラック」を発表。直線基調のボディデザインや、メイン素材にステンレスを用いるといった独創性が大きな話題を呼んだ。とはいえ、発表から4年目を迎えた2023年秋の時点でも、サイバートラックの市販モデルは1台も納車されていない。しかし、ビッグスリーにとって大きな脅威となったことは間違いないだろう。

テスラ・サイバートラックのフロントスタイリング

 そんなアメリカのピックアップ市場において、初めてリリースされたEVモデルはリビアンの「R1T」である。アメリカのEV専業メーカーであるリビアンは、2009年にルーツとなる企業が誕生。現社名になったのは2011年で、自動運転やEV開発を専業とする新世代自動車メーカーだ。その第一弾がピックアップの「R1T」で、2021年9月に市販が開始された。

リビアンR1Tのフロントスタイリング

 まずは、そのリビアンR1Tから紹介しよう。車体は前後4枚のドアを持ち、荷台部分は独立ではなく一体式となるモノボディ。ボディサイズは全長5514×全幅2077×全高(アンテナ含む)1986mm、ホイールベースは3449mmだ。

リビアンR1Tのサイドスタイリング

 ラゲッジスペースは荷台のほか、フロントボンネット下、そしてリヤドアとリヤタイヤハウスのあいだに設けられた「ギアトンネル」の3箇所が用意される。このギアトンネルには、電気コンロ、食器、シンク、ストリングライトなどがついたスライド収納可能なキャンピングキッチンをオプションで購入することもできる。

リビアンR1Tの「ギアトンネル」

 R1Tのラインアップは3モデル展開で、デュアルモーターの標準仕様(533馬力)、デュアルモーターの高出力仕様(665馬力)、そして合計4基のクアッドモーターでは835馬力ものパワーを誇り、0-60マイル(約96km/h)加速は3秒という動力性能を誇る。駆動方式はいずれもAWDで、航続距離はデュアルモーターが約432km、オプションの大型バッテリーを装着すると最大640km。クアッドモーターでは524.8 kmとなる。リビアンR1Tの価格は7万9000〜8万7000ドルとなっている。

3台のリビアンR1Tの走行写真

 テスラやリビアンが新型車両としてEVピックアップを発表したのに対して、ゼネラルモーターズ、フォード、ステランティスは従来から発売されているピックアップにEV版を追加している。つまり、次世代モビリティのピックアップ版として開発されたのがR1Tやサイバートラックであり、一方のビッグスリーは伝統あるピックアップを従来から所有しているオーナーに向け、新しいパワーユニットとしてEV仕様を追加するという形式だ。

 EVピックアップの市場は今後さらに拡大していくだろうが、はたして北米市場の消費者はどう受け入れるのかが注目だ。


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