この見た目で「ガチに走る」ことを考えて設計だと!? 日産HYPER FORCEはナニモノなのか関係者を直撃した! (1/2ページ)

この記事をまとめると

■ジャパンモビリティショー2023が開幕

日産ブースではHYPERで始まるネーミングのクルマ5台が公開された

■とくに注目を集めるHYPER FORCEについて関係者を直撃

走ることを前提に設計されたHYPER FORCE

 記念すべき第1回、ジャパンモビリティショー。ステージの演出の上手さが印象的だった日産ブースだが、その舞台に相応しい華やかな話題を振りまいたのが、HYPERで始まるネーミングを与えられた5台、HYPER 5兄弟だった。

 HYPER 5兄弟のうち、2台はバーチャル、3台はリアル展示となったが、そのなかでもプレスデー初日のお昼過ぎにアンベールされたHYPER FORCEの存在感は別格だった。なぜなら、それは誰がどうみてもGT-R一族の形をしていたから。でも、日産はそれをひとこともGT-Rとして謳わないし、その過激なイデタチをして単なるデザインスタディだろ、と片付けてしまうこともできたかもしれないが、そこで引いてしまってはツマラナイ。幸運にもHYPER FORCEのプロジェクトに携わった、日産自動車の成田剛史さんと日産モータースポーツ&カスタマイズ株式会社ニスモ事業所の山本義隆さんにお話を聞くことができた。

ジャパンモビリティショー2023の日産ブース

 そもそもこのHYPER FORCEはどのようなコンセプトで企画がスタートしたのだろう。その問いに対して成田さんが口を開く。

「とあるサーキットの、とある超高速コーナーで最大グリップを発生するように設計してあります」。

 返ってきたのはいきなり“走る前提の話”である。いかにもコンセプトカー然としたHYPER FORCEに対する見方が変わってくる。そのグリップの発生源は車体にあるのか、それともe-4ORCEなのか、そんな疑問が湧く。再び成田さんが答える。

「どういうパッケージだったらそのコーナーリング・スピードを達成できるのかという意味で、エアロダイナミクスが超重要です。でもそれだけではなくて、タイヤ、まずコレが基本ですね。そして次にそのタイヤをグリップさせるために車体を路面に押し付ける力、つまりダウンフォースとなってくるわけですが、具体的な数値は申し上げられませんが、最新のR35 GT-Rニスモの数パーセントとか数10パーセント増ではなく、“ウン倍”はダウンフォースが得られる設計になっています。ダウンフォースで車体を路面に押し付けてグリップ力を稼ぐのはもちろんですが、それに加えて、e-4ORCE、4輪独立制御でトルクベクタリングなどを含めて賢くマネージメントするというのが基本です」。

日産HYPER FORCEのフロントスタイリング01

 空気の流れと4輪のトルク配分を制御することによってコーナーリング・スピードが上がっていくということだろうか。成田さんが続ける。

「コーナーリング時に、少しでも内側より外側のタイヤにトルクをかけたら速く曲がれる、あるいはいずれかの車輪でスリップが始まったらトルクを落としてグリップが回復したらトルクをかけるということが車体を安定させるということはイメージしてもらえると思います。e-4ORCEはこの制御作業を1秒間に何十回と行うわけです。それだけではなく、コーナーリング中に車体がロールし、外側に荷重が持っていかれて内輪が浮き気味になると、内輪側のアクティブエアロが作動して空気の力でその浮きを抑え込む機構も備えています。コーナーリング中のグリップ力を最大化するのがこのクルマの一番の特徴です」。

 つまり基本的なボディ造形、e-4ORCE、さらに可動式のアクティブエアロの3段構成でグリップ力を最大化させるというわけだ。必要に応じてダウンフォースを発生させる可動式のアクティブエアロは複数車体に組み込まれている。ニスモ事業部の山本さんによれば、さらに空力的な工夫が凝らされているという。

日産HYPER FORCEのリヤスタイリング

「HYPER FORCEにはアクティブエアロ以外にも空力ディバイスが備わっていまして、それが日産の特許技術のプラズマアクチュエイターというものになります。プラズマアクチュエイターは、車体表面を流れる空気が、表面の凹凸やアールを拾って剥離すると乱流が出現し、車体を押さえつける力が弱まってしまうことの対策として、電気的にプラズマを発生させて車体表面に空気を吸いつける機構です。これをコーナーリング時の外側の車輪側に作動させて、車体表面を流れる空気の剥離を抑制する、ということを複合的にやっています」。

 プラズマアクチュエイターは、前後輪後方や、どうしても空気が剥離しやすくなるウィング下面部分などに仕込まれているという。ボディ全体でダウンフォースを稼ぐ設計をしていながら、さらにアクティブエアロとプラズマアクチュエイターでさらにダウンフォースを生み出し、ドラッグを減らす工夫を凝らしているというわけだ。

日産HYPER FORCEのシートまわり

 ところでこのHYPER FORCE、車体横には1000kWという数字が誇らしげに書かれているが、果たしてこれは現実的なものなのだろうか。成田さんが語る。

「1000kW、約1350馬力、今のGT-Rのほぼ倍ですよね。でもこれは本当に想定している数字。十分可能なものだと思っています。少々乱暴な話ですが、大きなバッテリーと大きなモーターを積めば、加速が良いクルマは簡単に作れるんです。ところがそれだけでは、たとえばポンとアクセルを踏むと“グイッ”とドライバーの首に負担がかかったり、ブレーキを踏めば“ガクッ”と止まるような、ギクシャクした動きになってしまう。なのでe-4ORCEで滑らかに加速して滑らかに止まるということを繊細にマネージメントして、その技術をスポーツの領域にまで最大活用しようというのがこのクルマの狙いになります。目指すのは異次元の加速と異次元のコーナーリングなのです」。


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