単なるフタとか思ってない? クルマ好きでも意外と知らない「ラジエターキャップ」のもつ重要な役割 (2/2ページ)

劣化するとどうなる? 交換サイクルはどのぐらい?

■ラジエターキャップが劣化するとどうなる?

 これでラジエターキャップがエンジンの冷却性能の維持にとって大事な役割を担っていることはわかっていただけたと思いますが、劣化した場合はどのような症状になるのでしょうか。

 まず適正な圧を維持するためには密閉することが重要ですが、そのカナメとなるパッキンが劣化した場合を考えてみます。パッキン類の多くはゴム製です。ゴムは高温にさらされると劣化しやすい特性がありますので、過酷な状況に多く晒された場合は、硬化やひび割れなどが発生して密閉能力が下がってしまいます。劣化が進むとパッキンの役割を果たせなくなってしまいます。

ラジエターキャップのゴム類

 次に、金属部分のサビの発生の問題です。一応水まわりにつかう部品なのでサビ対策を施されていますが、それでも長年使用しているといずれはサビが発生します。サビの発生が多くなってくると、圧力弁のバネの劣化で張力が保てなくなったり、サビの成分が堆積して弁の動きを妨げたり、密閉力を落としてしまったりします。そうなってしまうと、パッキンが無事でも圧力を正しく維持できなくなり、オーバーヒートを招きやすくなってしまうんです。

■社外品や、レース用のキャップは使って問題ない?

 ラジエターキャップを交換しようと思ったとき、どうやって入手したらいいのか気になりますね。純正品はディーラーや部品販売店で入手することになるため、フラッと行って部品だけ購入して持ち帰り、とはいかない場合があります。そんなときは社外品を活用しましょう。社外品でも、しっかりとしたメーカーの製品であれば性能的に何ら問題はありません。純正品と同じように安心して使用できて、交換のタイミングも同じ感覚で大丈夫でしょう。購入はカー用品店やガソリンスタンド、いまどきは通販でも気軽に購入できますね。

※ラジエターキャップには種類があるので、確認したうえで購入しましょう

 また、特殊な例としてレース用の強化ラジエターキャップという製品もあります。これは圧力弁のバネを強化してより高い圧力に設定することで対応温度を高くして、発熱の大きいレースでの使用に耐えるようにするという製品です。

レース用のラジエターキャップ

「対応温度が上げられるなら高いほうが安心できるのでいい」と思った人がいるかもしれませんが、温度を高く設定するためには、冷却水の圧も高くなるので、純正の設計では各シール類やホースバンドなどに想定以上の負荷が掛かってしまいます。レースごとに点検をおこなうレース用のエンジンなら問題が起きづらいと思いますが、一度交換したら2年はそのままという常用のクルマで、もともとの設計の値を超える高い圧力での運用は避けたほうがいいと思います。

■どれくらいの期間で交換するもの?

 使用する環境やエンジンの設計、発熱量など、劣化を招く要素はさまざまなため、ラジエターキャップの劣化がどの期間で起こるかという明確な基準はないようです。ですので、あくまで目安としてですが、車検をおこなうタイミングで交換するのがベストという認識が主流だと思います。

 ただ、この2年に一度という目安も使用環境などによって必ず無事とはいい切れないため、ラジエターキャップを販売しているメーカーでは、「1年に一度の交換が理想的」としているところもあります。

エンジンルーム内のラジエターキャップ

 大事なのは猛暑を乗りきった秋くらいのタイミングで、エンジン始動前にラジエターキャップの状態を目視で確認しておくことだと思います。

 エンジンにとってオーバーヒートとは、一度やり過ごせたとしても後遺症のように各部にダメージが残ってしまうというメカニックの意見も聞きますので、極力そうならないように、ラジエターキャップの点検は定期的におこなうようにしておきましょう。


往 機人 OU AYATO

エディター/ライター/デザイナー/カメラマン

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スズキ・ジムニー(SJ30)※レストア中
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釣り/食べ呑み歩き/道の駅巡りなど
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