こんな商品ホンダじゃなきゃ出せんだろ! ノリと勢いが詰まった「N-BOXスラッシュ」みたいなクルマがいまこそ欲しい!! (2/2ページ)

この手のクルマがもう1度蘇ってほしい!

 商品化の経緯もユニークだ。デザイナーが遊びで描いたスケッチが「これは面白い」という話になって具体化された。車内には乗員を包むような雰囲気があり、「ふたりで楽しむオーディオルーム」というコンセプトも与えられた。

 そのために、サウンドマッピングシステムも用意され、8個のスピーカーや360Wのパワーアンプを採用した。吸音ウレタンや制振シートで音響効果を高めたデッドニングキットも用意され、通常の走りでも静粛性が向上して、ドアの開閉音まで重厚になった。

ホンダN-BOX スラッシュのスピーカーと360Wパワーアンプ

 このように、N-BOXスラッシュは軽自動車のスペシャルティカーだから価格も高かった。Xターボパッケージは176万円で、オプションを加えると200万円を超えた。2014年当時では、かなり価格の高い軽自動車であった。

 そして、クルマは高額商品で、派生車種でも膨大な開発費用を要する。それなのにN-BOXスラッシュは、計画的な開発ではなく、思いつきやノリで商品化された。常識では考えられないクルマ作りだが、それを可能にするのがホンダの企業風土でもある。

ホンダN-BOX スラッシュの走行写真

 思いつきやノリは、いわばシャレだから、長く続けるとヤボになる。だから2017年に登場した2代目N-BOXに、スラッシュは設定されなかった。2020年まで初代ベースのN-BOXスラッシュを作り続けた。そして3代目の新型にもN-BOXスラッシュはない。

 それにしても、最近はN-BOXスラッシュのようなホンダ車が登場していない。2015年に発売され、2022年3月に終了したS660が最後だ。

ホンダS660

 ホンダのホームページの「カーラインアップ」を見ると、寂しいというか、ちょっと心配になる。


渡辺陽一郎 WATANABE YOICHIRO

カーライフ・ジャーナリスト/2023-2024日本カー・オブ・ザ・イヤー選考委員

愛車
フォルクスワーゲン・ポロ(2010年式)
趣味
13歳まで住んでいた関内駅近くの4階建てアパートでロケが行われた映画を集めること(夜霧よ今夜も有難う、霧笛が俺を呼んでいるなど)
好きな有名人
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