クルマのボディの主役はやっぱり鉄! 置換素材の「アルミ・カーボン・FRP」は何が凄くで何がネック?

この記事をまとめると

■クルマにとって軽量化は最重要課題となっている

■鉄よりも軽量な素材とされるアルミやカーボン、FRPはボディ構成材として注目されている

■軽さと強さの両面でさまざまな素材が使われているが、それでも鉄が主役の座を堅持している

鉄に代わる素材として使われるアルミやカーボン

 クルマの究極的な姿は、軽量・小型であるといわれる。また近年は、脱二酸化炭素へ向けた排出量低減のため、軽量化は重要課題となっている。そこで、これまで車体を構成してきた鉄から、アルミニウムやカーボンファイバー、あるいはガラス繊維などへの転換が、折に触れ行われてきた。

 アルミニウムは、比重が鉄の約3分の1であるため、金属材料として軽いのが特徴だ。また、錆びにくいことも、長期的に使うクルマにとってよい点といえるだろう。ほかにも、環境課題としてのリサイクル性に優れるところも注目されている。一方、金属としては柔らかく、変形しやすいため、クルマで使うには工夫がいる。たとえば鋳物や鍛造品にして使うとか、引き抜き材と呼ばれる管状にして使うなどだ。鉄板のような一枚の板で構造材にすることは難しいだろう。

ホンダNSX(初代)のアルミニウムボディ

 カーボンファイバー(炭素繊維)は、アクリル繊維を炭化させた材料で、樹脂で固めた製品は、比強度でアルミニウムの5倍も強いといわれる。つまり、アルミニウムと同じ強さであれば、非常に軽くすることができる。軽くて強いのが、カーボンファイバーの利点だ。

 しかし、製品を作るには、型に張り込み、熱と圧力で固めることになり、手間がかかる。量産化もはじまっているが、それでも金属材料を量産するのに比べれば、まだ手数がかかる。また、リサイクル性のよいアルミニウムと比べれば、廃棄後の処理がまだ十分に開発しきれていない面がある。

ランボルギーニ・アヴェンタドールのボディ

 ガラス繊維は、カーボンファイバーの代わりにガラスを融かして繊維にしたもので、樹脂で固めることで製品となるが、軽い一方で強度はそれほど高くはない。車体などの外板には用いられても、車体構造部としての強度は足りない。

 しかし、金属材料ではないため、錆などの心配がない。耐水性にも優れる。製品の形の自由度もある。たとえばサーフボードなどにも利用される。リサイクルでは、素材へ戻すことは難しいが、破砕してセメント製造の燃料や原料で利用されている。

ガラス繊維のイメージ写真

 軽さの追求と、強さの確保の両面で、さまざまな素材が使われるようになっているが、主役の座を堅持するのが鉄だ。ただし、鉄をそのまま使うのではなく、炭素を数パーセント含む合金としての鋼にしたり、他の素材との化合物としたりすることで、ステンレス鋼にするなど多様な用途に適応させることができる。

 また、鉄板だけでなく、鋳物としても利用価値があり、クルマに欠かせない材料だ。ただ、鉄鉱石から鉄を作り出す精錬で、コークスを使って加熱するため、二酸化炭素の排出をいかに抑えるかが課題となっている。一方で、廃棄された鉄(スクラップ)は多くが再利用されている。

製鉄所で精製された複数個の鉄のロール

 鉄からの材料置換(鉄以外の材料へ転換する)は、永年行われているが、すべてを鉄から離れることは難しく、いかに環境に配慮した手法で鉄と付き合い続けることができるかが、当面の環境課題ではないだろうか。


御堀直嗣 MIHORI NAOTSUGU

フリーランスライター/2023-2024日本カー・オブ・ザ・イヤー選考委員

愛車
日産サクラ
趣味
乗馬、読書
好きな有名人
池波正太郎、山本周五郎、柳家小三治

新着情報