愛犬との幸せカーライフはクルマ選びが第一歩! 犬とクルマを知り尽くしたジャーナリストが選ぶ「これを選べば間違いなし」の実車名 (1/2ページ)

この記事をまとめると

■愛犬家がクルマ選びで重視するポイントを解説

■犬に不快や刺激を与えないクルマを「ドッグフレンドリーカー」と定義

■ボディタイプ別にドッグフレンドリーカーを紹介する

犬がクルマで快適に移動するための条件とは?

 愛犬家にとって、使いやすく、犬を乗せやすく、犬とともに快適にドライブを楽しめるクルマはどんな車種だろうか。それは、1994年からゴールデンレトリーバーのナナ、2007年からラブラドールレトリバーのマリア、そして現在はジャックラッセルのララとキャバリアのアーモンドと暮らし、モータージャーナリストにしてドッグライフプロデューサーとしても活動するとともに、フォルクスワーゲンの「フラットベッド」、ボルボの「ドッグベッド フルサイズ、ドッグベッド ハーフサイズ」といった純正アクセサリーの企画、デザインを担当しているボクにとって、ここ30年間、考え続けていることだ。

 ここでは、そんな疑問を解決すべく、クルマのジャンル別に、愛犬と愛犬家に相応しい、人気車種を紹介したい。

 まずいっておきたいのは、愛犬の特等席は後席(ミニバンの3列目席を含む)ということ。TVCMなどでワゴンやSUVのラゲッジルームに犬を乗せているシーンを見かけるが、動物専門業者の短時間の移動ならともかく、家族の一員である愛犬をラゲッジルームに乗せるのには反対である(長時間・長距離移動の場合)。

 理由は、そもそもラゲッジルームは誰かが乗るようには作られておらず、乗り心地、空調面(1年中、毛皮を着ている犬は基本的に暑がり)で推奨できない空間だからだ。写真を撮ると、なかなか絵にはなるんですけどね。

 また、キャビンにいる飼い主との距離が離れ、ドライブ中の愛犬の様子(車酔いなどの体調)が確認しにくく、愛犬と飼い主がともに安心できるアイコンタクトもしにくいからである。

 どうしても乗員の都合で大型犬をラゲッジルームに乗せざるを得ない場合は、後席が4:2:4分割のクルマで、中央の2部分を倒してスルー空間を作り出し、アイコンタクトがしやすく、空調が届きやすいようにしてあげたい。

 愛犬と愛犬家に相応しいクルマを、ボクは「ドッグフレンドリーカー」と呼んでいるが、基本的な要素としては、乗り降りしやすく(犬が自身で乗り降りする場合を含む)、走行性能がスムースで乗り心地がよく、車内が静かで犬の乗車場所にも空調が行き届き、犬の特等席の後席のシートサイドに隙間がなく、できれば雪道にも強い(雪道を走る機会が多い場合)オールラウンダーにクルマが理想……というのが、愛犬と暮らし、毎月のようにプライベートや愛犬同伴のドライブ企画の仕事をしているボクの持論である。

 具体的に説明すると、乗り降りしやすいクルマ(犬が自身で乗り降りする場合を含む)とは、後席のサイドシルが低めで、サイドシルとフロアに大きな段差がなく(ミニバンに多い掃き出しフロアが理想)、飼い主が犬を抱っこして乗り降りする場合は、それに加え、リヤドアの開口部が広く、ルーフ、天井が高いとお互いに快適に乗降できることになる。

 そして、スムースな加減速性能を備え、フラットで前後左右の姿勢変化が少なく、ショックの少ない快適な乗り心地のクルマであることも重要だ。というのは、犬はどのように乗せようとも、車内でどこかにつかまることができないからである。カーブなどでグラグラするクルマだと、爪を出して踏ん張ることもありうるが、それがそのままストレスになってしまうらしい(わが家の自称自動車評論犬!?談)。

 車内の静かさもドッグフレンドリーカーとしての資質に大きくかかわるポイントだ。犬の聴覚は人間の4倍とも言われ、雑音が苦手。とくに高周波の音は、人間の可聴上限が20キロヘルツのところ、犬は65キロヘルツまで聞こえるとのことで、それは犬のコミュニケーション能力でもあるのだが、うるさい環境では犬は落ち着かず、疲れてしまいがちなのである。

 犬の乗車場所に空調が行き届くことも、とくに暑い時期のドライブでは気を使うべき点だ。犬は1年中毛皮を着ていて、脱ぐことができない、基本的に暑がりの生き物なのである(愛玩犬の多くは涼しく湿度の低い北ヨーロッパが原産)。

 よって、暑い時期のドライブでは、空調(エアコン)の冷風が届くことが重要。後席エアコン吹き出し口、ミニバンに多い2/3列目席の天井吹き出し口は必須といえる(ボルボは車種によって、さらにBピラーにもエアコン吹き出し口がある)。

「犬の特等席である後席のシートサイドに隙間がないこと」と言われてもピンとこないかもしれないが、愛犬を自身で、あるいは抱っこして後席に乗せる際、ダブルコートの犬だとどうしても抜け毛が落ち、それがシートサイドの隙間の奥に落ちると掃除が困難で車内の動物臭の原因になってしまう。それを避けるべく、シートサイドに隙間がない車種を推奨している。

 最後の雪道に強いオールラウンダーなクルマ……という意味は、犬の寿命は10年から15年と短く、その時間のなかで、いかに多くの飼い主といっしょの楽しい体験、時間を過ごさせてあげられるか、という点にある。ドライブ旅行、とくに宿泊を伴うドライブ旅行は、普段はお留守番の時間が長いかもしれない犬にとって、24時間、飼い主といっしょにいられる至福の時間、経験。つまり、短い犬生の間に、いかに多くの愛犬とのドライブ旅行経験をさせてあげるかも、愛犬の幸福度に大きくかかわってくる。

 しかし、冬、楽しみにしていたドライブ旅行計画が、突然の雪で中止、あるいは、悪天候だから中止……では、家族も愛犬もがっかり。愛犬にとってそう多くはない楽しみにしていた機会が失われてしまう。だからこそ、雪道や悪路にも強い、全天候型のオールラウンダーなクルマが理想的というわけだ。


青山尚暉 AOYAMA NAOKI

2023-2024日本カー・オブ・ザ・イヤー選考委員

愛車
フォルクスワーゲン・ゴルフヴァリアント
趣味
スニーカー、バッグ、帽子の蒐集、車内の計測
好きな有名人
Yuming

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