ナンバーから客の自宅を突き止める! 夜にお客の自宅で商談は当たり前! 不適切にもほどがあった昭和の新車ディーラー (2/2ページ)

いまではストーカーといわれかねない昭和のセールススタッフ

 昭和の時代の来店客はフラっとやってくる「フリー客」がほとんどだが、令和のいまでは「商談予約」をとってから店を訪れるというスタイルが主流になろうとしている。インターネットによる飲食店や宿泊施設など、さまざまなものへの“予約サイト”というものの普及もあるので、若い世代ほど“予約”をいれてから商談ということも多いようである。

 1980年代について事情通は、「新車を買ってくれそうなのだが、名前も住所もいわずに帰ってしまったというお客がいたそうです。するとそのセールススタッフはそのお客が乗ってきていたクルマのナンバーを控えており、馴染みの警察官に連絡してナンバー照会して名前や住所を聞きだしたといった話を聞いたことがあります。「いまでは何もかも信じられない話ですが、住所を聞きだしてまさに“サプライズ”で当該お客宅を訪れると、『よく調べたね』と喜んで新車を買ってくれたというから、何もかもがいまどきの“常識”では語ることのできない時代でした」と話してくれた。

 ディーラーを訪れ、「来店アンケート」などに氏名や住所を記入してくれば、その日の晩にはセールススタッフがやってくるのは既定路線ともいわれていた時代でもあった。

 いまは個人情報保護法というものもあり、来店者や顧客情報は厳しく管理されており、たとえ店頭アンケートに答えたとしても、その個人情報をもとに自宅を訪れるなど直接的な販売促進活動に使うことはできなくなっている。

 そもそも1980年代は、「売れば売るほど給料が潤う」ということで高収入を狙って新車販売セールスマンを目指す人も多かった。そのため、A社のほうがセールスマージンはいいと聞けば顧客情報ごと転職(いまはできない)をするなど、業界を渡り歩くセールススタッフも多く、新車を買ったとたんに担当セールススタッフがいなくなるということも当たり前のようにあった。

 一方で、いまどきは大手自動車メーカーの看板を背負って商売しているということで、ステイタスや安定を求めて入社してくる若者も目立ってくる。「●●ハラスメント」などとすぐに訴えられるので、1980年代のように新車が売れないからといって激しい叱責を受けることもなくなった。

 1980年代には当たり前だった各セールススタッフの月ごとの目標達成度合いを示す「受注グラフ」もなくなっていると聞く。職人気質の強かった1980年代に比べれば「働きやすくなった」ともいえる令和の新車販売だが、ガッツリ稼ぐことができなくなったのもまた事実である。

 ただ、1980年代と令和で共通しているのは、いまだに「男の職場」臭の強いところ。さすがに1980年代に比べれば女性セールススタッフの数はかなり多くなっているが、筆者は仕事柄、頻繁に新車ディーラーを訪れるが、応対してくれるセールススタッフは圧倒的に男性が多い。そのため、いまも1980年代も新車ディーラーのショールームへ行って見える風景はそれほど変わっていないということを実感している。

 少なくとも1980年代の香りが残っているように感じる新車販売という業界は、やや時代に取り残された業界になってきているのかもしれない。


小林敦志 ATSUSHI KOBAYASHI

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