この記事をまとめると
■HVやEVなどの電動車には「サービスプラグ」という安全装置が設置されている
■サービスプラグを外せば一時的に電流を遮断でき、整備時などに感電する事故を防ぐ
■知識のない素人が安易にサービスプラグに触れるのは御法度だ
整備のときの万が一を防止するのが「サービスプラグ」
電気自動車(EV)や、ハイブリッド車(HV)、あるいは燃料電池車(FCV)など、モーターを駆動に利用して走るクルマは、車載の駆動用バッテリーから高い電圧の電流を流し、モーター駆動する。その電圧は、数百ボルトに達する。
エンジン車に車載される補器用バッテリーは12ボルト(V)で、それほど高い電圧ではない。それでも、万一ショート(短絡)すれば、火花が散って衝撃を感じるほどだ。それが十数倍の駆動用バッテリーの高電圧ともなれば、命に関わるほどの感電を引き起こす懸念がある。そこで、EVなど電動車両の点検や整備を行う際は、高電圧の駆動用バッテリーの電流を一時的に遮断する必要がある。
そのためのスイッチが、サービスプラグと呼ばれる部品だ。整備や点検を行う際の、安全を確保する。
サービスプラグを外せば、駆動用バッテリーからの高電圧は遮断されるが、まだ配線内に高い電圧の電気が残留している可能性があり、10分ほど時間が経過してから作業をはじめるようにとされている。
一般には扱わないスイッチなので、バッテリーケースの近くの床下などに設置されている場合が多い。まず、12Vバッテリーのマイナス端子を外してから、サービスプラグを外し、高電圧を遮断する。ちなみに、12ボルトの補器用バッテリーに関わる配線と区別するため、高電圧の配線にはオレンジ色の覆いがなされている。
作業をする際は、絶縁手袋をはめなければならない。また、万一のショートに備え、目を守るゴーグルやゴム長靴を着用して作業を行う。電力会社の人が、電柱で工事をする際に装う姿を思い出すと一助になるかもしれない。
使う工具は、手持ち部分などが絶縁素材で覆われた特別な道具を用いる。一般的な金属工具では、作業に夢中になり、電極などに触れてショートしてしまう懸念があるからだ。
こうした高電圧部分の整備を行うには、低電圧電気取り扱い資格が必要になる。数百ボルトの駆動用バッテリーなのになぜ低電圧かというと、世の中には数千ボルトといったもっと高電圧の機器があり、それに比べれば電動車両の電圧は低い電圧になるためだ。
一方で、消費者がEVやHVに乗る場合に厳重な備えをする必要はない。万一、交通事故で車体がつぶれ、高電圧配線がちぎれるような事態になっても、アースする機能が備わっているので、脱出や退避に際して感電の心配はない。
サービスプラグの存在を知っておくことは大切かもしれないが、素人が安易に触れたり、抜き差しをしたりしないことが肝心だ。