いくら魅力を語れど売れなくなるには理由がある! セダン&ワゴンが日本で衰退しているワケ (1/2ページ)

この記事をまとめると

■セダンやワゴンのラインアップは国産車では大幅に数を減らした

■いまは世界的にSUVやミニバンが売れ筋モデルとなっている

■ワゴンは全高の低さやラゲッジの広さなどが武器でまだまだ魅力が多い

いつからセダンやワゴンは売れなくなったのか

 かつてセダンはクルマのステイタスを誇る存在だった。「いつかはクラウン」のトヨタ・クラウンがその代表例であり、その車内の静かさで世界の自動車メーカーを驚愕させたトヨタ・セルシオの登場もセダン(サルーン)=ステータスの象徴だった。

 また、1980年代末から1990年代にかけては、日本でもステーションワゴンブームが勃発。1989年の初代スバル・レガシィが登場し、GTグレードの高性能ワゴンが一世風靡。「スポーツカーが嫉妬する」トヨタ・カルディナや日産ステージアなどのハイパワーステーションワゴンが台頭。

 当時は国産車の販売のうち、約30%に迫る台数がステーションワゴンだったのである。ホンダ・フィットのステーションワゴン版であるシャトルも一時期、人気だった。

 しかし、いまではセダン、ステーションワゴンに代わって、SUVの人気が沸騰。日本の自動車メーカーはもちろん、かの欧州スーパーカーメーカー、ハイエンドメーカーでさえ、続々とクロスオーバーモデル、SUVを登場させ、屋台骨になっているほどで、自動車先進国の北米でも、セダンが駆逐されつつあるのだから時代の変化は著しい。何しろ、国産セダンの代表格だったトヨタ・クラウンの最新型が、最初にSUVルックのクラウン・クロスオーバーとしてデビューしたほどなのだから……。

 ちなみに2024年4月の国産車の乗用車ブランド別ランキングでは、上位10台に占める割合は、コンパクトカー、ミニバン、SUVだらけ。20位まで見ても、セダン、ステーションワゴンは見当たらない(カローラとクラウンは一部あり)。

 ステーションワゴンでいえば、いま、新車で買える国産車はスバル・レヴォーグ(31位)、トヨタ・カローラツーリング、カローラフィルダーのみと寂しい。ただし、スバル・レヴォーグのクロスオーバー版であるレイバックや、北米市場中心のスバル・レガシイのクロスオーバー版のアウトバックは、背が高く最低地上高に余裕あるステーションワゴンのAWDモデルということができるのだが……。また、マツダのフラッグシップセダンのMAZDA6も国内向けモデルの生産終了がアナウンスされている。

 では、セダンが世界的に衰退した理由はなんだろうか。日本においては、1996年の初代ホンダ・ステップワゴンの発売がきっかけとなったミニバンブームだったかも知れない。セダンは低重心で走りがいい……ミニバン(ワンボックス)は重心が高く、重く、走りがイマイチ……という、それまでの常識を覆した乗用車プラットフォーム採用の多人数乗用車の登場である。それはホンダ・オデッセイやトヨタ・ノア&ヴォクシーにも引き継がれ、日本における空前のミニバンブームが長きに渡って続いたのである。

 大空間によって、すでにステータス性が薄れたセダンや遊び心をくすぐるステーションワゴンでは乗り切れない乗員を乗せられ(最大8人)、セダンでは積めない荷物を積みこむことができ、その上でセダンライクな走りが得られたのだから、たとえば狭小住宅に住む人に夢を与えたことは間違いなく、また、アルファードに代表される高級ミニバンの登場で、社長族、VIPに愛用され続けてきたのも事実。

 VIPが乗るのに、大型セダンより高級ミニバンのほうが、スライドドアによる乗降性のよさ、そしてなんといってもセダンでは得られない大空間のゆとり、車内での仕事のしやすさなどで優位に立つことは間違いないところ。国産ハイエンドミニバンでは、一流ホテルのエントランスに乗りつけても堂々と似合うトヨタ・アルファード、レクサスLMがその象徴だろう。

 一度、乗ってしまえば(一般ユーザーを含め)、もうセダンに戻ることはできない世界がそこにある。


青山尚暉 AOYAMA NAOKI

2023-2024日本カー・オブ・ザ・イヤー選考委員

愛車
フォルクスワーゲン・ゴルフヴァリアント
趣味
スニーカー、バッグ、帽子の蒐集、車内の計測
好きな有名人
Yuming

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