配線を増やすだけで「パワーアップ」「ライトの光量増」「オーディオの音質向上」って魔法かよ! ひと昔前に流行したクルマの「アーシング」ってなんだったのか?

この記事をまとめると

■2000年代に流行ったお手軽チューニングの「アーシング」

■アーシングをするとオーディオの音質向上やパワーアップなどの効果が得られた

■下手に配線すると車両火災の原因にもなるので要注意だ

アーシングの効果とは

 2000年代に流行ったお手軽チューニングにアーシングがある。

 いまのクルマはECUから各種センサー、エアコンにライト、オーディオetcと、電気系パーツが山ほどある。これらを動かすには、配線=ワイヤハーネスが必要だ。普通に考えるとひとつの電気系パーツに、プラスとマイナス、それぞれ2本の配線が必要になるわけだが、前述の通り、電気系パーツは山ほどあるので、それぞれ2本の配線を通していたら、車体中配線だらけになってしまう……。

 でも、世の中には頭のいい人がいるもので、クルマのボディは鉄でできている。鉄は電気を通すので、マイナス側はバッテリーからボディに流し、プラス側だけ配線すれば、ワイヤハーネスは半分で済む、と気がついて、「ボディアース」を採用、いまに至っている。

 それでも年々、電気系パーツは増え続けているので、クルマ1台分のプラス側の配線だけで、総延長は3km以上、総重量30~40kgといったクルマも珍しくない!

 こうした事情がわかったうえで、ようやくアーシングのハナシだが、アーシングとはボディアースの代わりに、バッテリーのマイナス端子から電気系パーツまで新たに配線を引いて直接つなぐというチューニング。

「電流の強さは電圧に比例し、抵抗に反比例する(オームの法則)」ので、抵抗の多い普通の鉄のボディでアースするより、太くて抵抗の小さいハーネスで直結してやれば、電圧低下が防げて、ライトが明るくなったり、オーディオのノイズが減ったり、点火系が強化され、オルタネーターの負担も減って、パワーアップや燃費向上などの効果も期待できるとして注目された。

 実際、アーシングをするとライトが明るくなったり、1~3馬力パワーアップした例はいくつも報告されているが、電気ほど厄介なものはないので、できればいじらないのが正解でもある。

 自動車メーカーでは、ミリアンペア単位で管理して、各種配線を考えていて、配線の太さや抵抗にもそれぞれちゃんとした意味がある(例:細い配線はショートしたときに焼き切れて、ハーネス自体がヒューズになる設計)。

 よかれと思ってアーシングなどすると、ECUやセンサー類が誤作動を起こし、最悪車両火災の原因にもなる(車両火災の大半は、後付け配線といわれているほど)。

 このように、アーシングにはメリットもあるが、リスクもある。

 一方で中古車などは、ハーネス類をリフレッシュすると、とってもクルマの調子がよくなるのも事実。

 というわけで、電気系チューニングでいいとこ取りをしたい人は、まずバッテリーの端子やコネクターに接点復活スプレーでもひと吹きし、ヒューズを一式新品に交換したり、エンジンハーネスを新品に交換したり、バッテリーのアース線を交換することからはじめてみることをオススメする。


藤田竜太 FUJITA RYUTA

モータリングライター

愛車
日産スカイラインGT-R(R32)/ユーノス・ロードスター(NA6)
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