この記事をまとめると
■バンコク国際モーターショーに「JUNEYAO AUTO」が出展し注目を集めた
■吉祥航空傘下の自動車メーカーで、タイでも本格展開を狙う
■異業種が保有する中国メーカーのなかには名声や地位のために買われたパターンも多い
乱立する中華系自動車メーカーのウラ側
タイには数多くの中国系ブランドが進出している。先日開催されたバンコク国際モーターショーの会場では14の中国系ブランドがブースを構えていたが、街なかを見渡せば、さらに多くの中国系ブランドが販売店を構えている。
第46回バンコク国際モーターショーの会場内を歩いていると、「JUNEYAO AUTO」という見慣れないブランドがブースを構えていた。
JUNEYAO AUTOは、タイでは2024年11月末にブランドデビュー。その直後に開催された「バンコク・モーターエキスポ」にて、初めてタイの自動車ショーでブースを構えた。気になって調べると、中国の航空会社である吉祥航空を傘下にもつ均瑶集団が雲度汽車を買収し、吉祥汽車に。JUNEYAO AUTOとは海外名で、「自動車と航空業界の融合」として買収当時は話題となっていたようだ。
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吉祥汽車に限らず、中国以外のオートショーにブースを構える中国系ブランドは多い。なかには現地販売にはあまり興味がなく、自国である中国に対して“「海外展開もしています」とアピールするだけに出展するケースもあると聞いている。
吉祥汽車からも一瞬その手の匂いを感じたのだが、展示してある車両は右ハンドルであるし、地元報道ではタイに現地組み立て工場の建設も予定しているというから、本気なのだと悟った。
そんな吉祥汽車だが、8年間、もしくは車両・モーターに関しては走行15万km、バッテリーについては走行距離最大80万kmまで無料で保証をつけるとバンコクモーターショーでアピール。さらに、成約特典として3年間の吉祥航空ゴールドメンバー会員資格を付与、3年間の期限つきとはなるがルート無制限で4席ぶんの無料航空券をプレゼントという、航空業界とのつながりをフルに生かした成約特典を用意していた。
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ただし、そこはタイ。吉祥航空のゴールド会員になったり無料航空券をもらったとしても、どこまで使い切れるのか? といった疑問を会場内で多く聞くことができた。
まさに星の数ほど自動車メーカーが存在する中国では、まるで日本でのラーメン屋のように「居抜き」で経営不振の自動車メーカーを異業種が買収することはけっして珍しくない。
少々昔に聞いた話では、「○○汽車 総経理(総経理は社長の意味)」という名刺をもつのは非常にステイタスの高いことであり、投資家や実業家といったひとのなかには、この名刺をもちオートショーのプレスカンファレンスに登壇するためだけに自動車メーカーを買収するひともいる、などといった冗談めいた話も聞いたことがある。
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地位や名声以外にも、政府からの補助金のような生臭い話も自動車業界参入の背景にあると聞いたこともあるが、そのような話は別としても「航空会社系自動車メーカー」というのは非常に珍しい存在だと興味津々でブースを訪れる人が多かった。
ちなみに吉祥汽車(JUNEYAO AUTO)のJY AIRというBEVの車両価格は75万9000バーツ(邦貨換算約335万円)からとなっている。また、エクステリアは航空機からインスピレーションを受けたデザインになっているとのことであった。