元F1ドライバーまで参戦する雪上の格闘技! フランスの国民的レース「アンドロストロフィー」がガチで面白かった (2/2ページ)

惜しくも2024年で終了……

 これだけの人気を誇る国民的レースですから、自動車メーカーがここぞとばかりにファクトリーマシンを出走させていました。主にWRCに参戦したメーカーとなるので、ルノー、プジョー、アウディらがコンパクトクラスを全輪駆動化させたマシンに、豪華なプロドライバーをブッキング。

 たとえば、トヨタF1で活躍してくれたオリヴィエ・パニスや日本でもお馴染みのセバスチャン・ローブ、さらにはパニスの息子、オレリアン・パニスやプロストの息子、ニコラ・プロストなど、レースファンならこれだけでも頬が緩むはず。

 また、氷上コースがちょくちょく場所を変えるのもアンドロストロフィーの特徴です。上述のセールシュヴァリエをホームコースとすると、ヌー・レ・マイヌやサン・ディエ・デ・ヴォージュといったオーバルコースを使うなど、飽きさせない工夫や巡業的な側面もあった模様。

 とりわけ、パリ郊外のサンドニにある国立競技場「スタッド・ド・フランス」に700トンの氷を運び込んでレースを開催した際は6万人が詰め寄せたとか。もっとも、開催地は天候に左右されることもしばしばあるそうですから、「今年のシャモニーは雪が少なそう」なんて悩みもあるようです。

 そんなアンドロストロフィーですが、時代の波に乗り遅れるなとばかりに、2019/20シーズンからは完全EV化を実施。メーカーも対応してルノーが秘蔵のEV、ZOEをエントリーさせたほか、アウディはA1をEV化したマシンでエントリーするなど、かなりのガチレースに仕上がっていたのです。

 もちろん、電動化されても氷上の格闘技テイストは変わることなく白熱していたのですが、アンドロストロフィーは残念ながら2024年がラストとなりました。理由は温暖化による天候の変化だそうで、雪や氷が少なくなってコース整備が難しくなってきたのだとか。せっかくEVにして温暖化の歯止めに貢献していたにもかかわらず、なんだか寂しい結末です。

 それにしても、モンテカルロ然り、シャモニー24時間耐久然り、フランス人は冬の楽しみ方を熟知しているのだと、アンドロストロフィーで思い知らされた気分です。


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石橋 寛 ISHIBASHI HIROSHI

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