後方視界は液晶モニターで確認
3)キャビンをもち上げてみた
トラック特有の機能といえば、なんといってもキャブチルト。運転席部分が前方に傾けられるので、エンジンメンテナンスのための機能といえる。大きな運転席部分がグワッと前に傾いている様は圧巻だ。
さて、このキャブチルト、運転席部分と荷室の間にあるロックを解錠して行うわけだが、運転席をもち上げるのはなんと人力! これだけ大きな物体を動かすのだからエンジンの動力やモーターなどが使えそうなものだが、100%手動なのだ。
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そして、その手順もいたってシンプル。ロック解除後に取っ手を持って、一気に運転席部分をもち上げるだけだ。もちろん室内に重い荷物があればそのぶんだけ力が必要だし、固定していない小物などを置いていれば、すべて室内前部に転げ落ちるので要注意だ。
実際にもち上げてみるとわかるが、なるほどエンジンへのアクセスは簡単だ。とはいえ、ボディもエンジンも大きなトラック。メンテナンスを考えると、これくらい大きな開口部がないとパーツ交換も容易ではないということだろう。
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ちなみにトラックのオーナーは取材日の前日、下り坂に停めた状態でキャブチルトしてしまったがために、なかなか運転席部分をもとに戻せなくて絶望したらしい。これは重量物が前方に移動するわけだから、前に倒すのは簡単でも、元に戻すためには平地よりも力が必要になるという当たり前の現象だが、なぜか急にオイル漏れが心配になって、何も考えずにやってしまったそうだ。
4)いよいよ運転してみる
いざ運転席に乗り込む。座面が高いトラックのドアを開けると、視線の先には漢の3ペダル。そう、思いっきりマニュアルだ。そして、運転席によじ登ってまわりを観察する。
目の前には水平に取り付けられた大径ハンドル。そして当たり前だが後部に窓はない。そして完全にシャットダウンされた後方視界を補うのはバックミラー代わりの液晶モニターだ。
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運転席から見える右前と左前はサイドミラーで死角は少ないが、後部は完全にモニター頼り。慣れれば気にならないのだろうが、四面をガラスで覆われている乗用車から乗り換えると、やはり後部の視界がないことは大きな違和感になる。
さらに、荷室の高さも気にはなるが、幸いなことにこれから走るのはトンネルもない田舎道。少しだけの安心材料だ。
ではいよいよエンジンスタート。ん? 見慣れない警告灯の数々。
ASR(アンチ・スリップ・レギュレーター)? DPD(ディーゼル・パティキュレート・ディフューザー)? ブレーキブースターチェックランプ? おまけに「P」と「!」ってなにが違うんだ?
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さらに、トラック初心者を翻弄させてくれるスイッチ類。何がOFFになるかわらない。エンジンに温泉マークってなに?
不安だったのでオーナーに聞いてみると、そのまま走って大丈夫とのことなので、素直に言うことを聞くことにした。そして、トラックを運転すること片道5分、レースの聖地である富士スピードウェイに到着した。
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空荷で軽かったこともあり、クラッチ操作やハンドル操作はなんの問題もなかったが、気になったのは、とにかく後方の直接視界がないことと車体の長さが把握できないこと。
対向車も少なく広い道でさえ気になるのだから、渋滞する都内での運転を想像すると、物流トラックドライバーは凄いなぁと感心するばかりである。
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もし、自分が日常的にトラックを運転するとしたら、それなりの車両感覚を身につけなければ、道幅が狭く渋滞する都内などは走れないだろうと思う。
普段、なにげなく見ているトラックだが、実際に触ってみたり、運転してみるとやはりトラックドライバーはプロなのだということがよくわかった。