スーパーカー界を揺るがす一大転機が訪れている! スーパーカー大王が予想する「混迷の時代」とは

この記事をまとめると

■現在、1970年代の930ターボ登場以来の大きな変革がスーパーカーを襲っている

■BEVやPHEVのスーパーカーがパフォーマンスと新たな魅力で存在感を強めている

■デザイン自由度の向上もあり、未来のスーパーカーはより個性的になるだろう

スーパーカー第2の転換点が到来中

 自動車の電動化が進むなかで、いわゆるスーパーカーにはどのような未来が待ち構えているのだろうか。それを考えるには、まずはスーパーカーとはなにかという定義を決めなければならないわけだが、これは誰が何回話し合っても答えを導くことができない永遠の命題。

 当然のことながら最高出力が何馬力以上であるとか、最高速が何キロ以上であるとかいう、明確な基準があるわけではない。搭載するエンジンも、デザインも、見る者がそれをスーパーカーだと評価すれば、それはスーパーカーとなり得てしまう。

 だが個人的には、スーパーカーの歴史にはこれまで2回の大きな転機があったように思う。最初の転機は1970年代中盤、ポルシェが当時の930型911にターボモデルを追加設定したとき。それまで多気筒大排気量のエンジンを搭載することこそが、ライバルと競合するひとつの規範と考えられていたスーパーカーの世界に、930ターボはわずか3リッターの6気筒ターボエンジンで挑んだ。

 ワイドなタイヤを覆うためのダイナミックなフェンダーワークやより大きなダウンフォースを得るためのリヤのウイングなどなど、それはアピアランスにおいても確かにスーパーカーだった。大排気量エンジンを必要とするスーパーカーの秩序は、ここに崩れ去ってしまったのである。

 そしてもうひとつの転機は、いままさに我々が見ているスーパーカーの電動化だ。これまでにもすでに、電動化で武装したスーパーカーのいくつかには試乗してきたが、それらはいずれもICE(内燃機関)オンリーのスーパーカーよりも魅力的な走りを披露したことをここで報告しておく。

 確かに、これまでもっとも大きな魅力ともいえた官能的なメカニカルサウンドは、完全なBEV(バッテリーEV)では失われることになってしまうものの、それと引き換えにバッテリーの搭載位置から得られる重心の低さや適切な前後重量配分は、スーパーカーにとっては魅力的な走りを生み出すうえでなによりも重要なこと。

 さらにエレクトリックモーターは、ゼロ回転からでもアクセルを踏めば、その瞬間に理論的には最大トルクを発揮できるという利点がある。それが加速性能の向上に大きなアドバンテージとなることは当然なのだ。

 実際に、最近のスーパーカーのパフォーマンスを見てもその上位にはPHEVやBEVの名前が並ぶようになった。とくに印象的なのはやはり0-100km/hに象徴される加速性能で、実測値、あるいは公称値が確認できる。

 現在、世界でナンバーワンの数字を記録しているのは日本のアスパークの手による「アウル・SP600」。発進から1.7秒で100km/hに到達するこのモデルは最高速でも478.73km/hを記録しており、各輪にモーターを装備する4モーター方式で、1963馬力の最高出力と1920Nmの最大トルクがシステム全体で発揮される。

 それに続くのは、クロアチアのリマック・アウトモビリによるネヴェーラ、そしてピニンファリーナのバッティスタと、ピニンファリーナを除けばどちらもBEV新興メーカー。さらにランクを下げていっても、独創的なボディデザインで見る者を魅了する新興メーカーの存在が目立つことがわかる。

 繰り返すようだが、スーパーカーはいま確かな転換期を迎えているのだ。伝統的なICEのスーパーカーをグッドコンディションで楽しむのもいま、あるいはアーリーアダプターとしてBEVやPHEVのスーパーカーを誰よりも早く経験するのもいま。

 スーパーカーはこれからしばらくの間、混迷の時代に入っていくだろう。ひとつ付け加えるのならば、大きなエンジンを搭載する必要がなくなったBEVスーパーカーはデザイナーに大きな自由度を与えてくれる。より美しく、そしてインパクトに満ち溢れたスーパーカーが誕生することは間違いないだろう。


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