ホンダはいち早くDOHCエンジンを搭載
ホンダ S800は、1966年の生まれだが、その前に、ホンダS500とS600の時代がある。S500が発売されたのは、1963年だ。したがって、ふたり乗りのライトウエイトスポーツカーの取り組みは、ホンダのほうが早かったことになる。
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ホンダが、2輪から4輪へ進出する際にまず取り組んだのが、S360という2人乗りスポーツカーと、T360という軽自動車のトラックだった。
ホンダは、”世界のホンダ”を目指し、1959年に英国のマン島TTレースに出場した。その成果を糧に、4輪においてもまずスポーツカーという発想があったのだろう。また、そもそも2輪の製造に携わった創業の背景には、自転車にエンジンを取り付けることにより働く人を支援する考えがあった。そこから、4輪への進出に際し、軽トラックという発想にも結び付く。
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ちなみにS360は販売されず、S500からの市販になるが、このときから高性能エンジンを特徴としたホンダは、DOHC(ダブル・オーバー・ヘッド・カムシャフト)のエンジン形式を採り、最高出力はトヨタ・スポーツ800より300cc排気量が小さいにもかかわらず、44馬力もの出力を発揮した。
当然、S600、S800においても、高性能エンジンであることが要となり、S800の最高出力は70馬力に達した。
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いずれのエンジンも、排気量に対する出力が1リッターあたり100馬力に近い数字を出しており、100馬力/リッターは高性能エンジンかどうかをはかる指標のひとつであり、ホンダの面目躍如たる性能であったといえる。
ただし、ホンダS800の車両重量は、755kgで、トヨタS800に比べ175kg重かった。
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ところで、走行性能を比べる指標のひとつに、パワー・ウエイト・レシオがある。これは、1馬力で何kgの物を動かすかを表し、この数字が小さいほど加速性能に優れる。
計算すると、トヨタ・スポーツ800は12.8で、ホンダS800は10.7だ。
つまり、エンジン性能と車両重量の面でまったく異なる仕立ての両スポーツカーではあったが、パワー・ウエイト・レシオでは比較的近い数字が示され、ここから、レースの場面でよい競争相手になったことが垣間見えてくるのである。ちなみに、トヨタ・スポーツ800の軽さは、旋回時の性能を高めることにも役立つ。