この記事をまとめると
■トラックはドライブレコーダーの装着率が高い
■交通事故を積極的に防ぐ安全装備としては衝突被害軽減ブレーキも重要だ
■トラックの課題として衝突被害軽減ブレーキ作動による荷崩れを心配する声も多い
ドライブレコーダーは乗用車よりもトラックのほうが普及している
最近は設計の新しいクルマを中心に、ドライブレコーダーを装着する車両が増えた。ドライブレコーダーは、文字どおり車両の運行状態や事故状況を記録する装置で、装着率が60%を超えたとする調査結果も多い。
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トラックに関しては、保有車両の約74%がドライブレコーダーを搭載するというデータがある。とくに8トン以上のトラックは78%に達しており、大型化するほど装着率も高まる。
トラックに搭載されるドライブレコーダーの種類を見ると、40%以上が運行管理連携型だ。走行状態の録画に加えて、走行速度や位置情報も記録できる。AIを搭載したタイプもあり、前方の車両やドライバーの表情などもモニターできる。先行車両との車間距離が縮まったり、脇見運転をしているときなどは、ドライバーに向けて警報を発する機能もある。
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トラックでドライブレコーダーが普及した背景には助成制度もある。一定の上限額を定めて、ドライブレコーダーを装着するときに助成金の交付を受けられる。
交通事故を積極的に防ぐ安全装備として、衝突被害軽減ブレーキも大切だ。乗用車については、2021年に新型車への搭載が義務化され、2025年12月からは継続生産車も搭載しなければならなくなる。
トラックについては、2013年以降、車両総重量に応じて義務化が進んでいる。2024年の時点では、軽トラックを除くと、新車として売られるトラックの約96%が衝突被害軽減ブレーキを装着するというデータがある。
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ただし、トラックは乗用車に比べて使われる年数が長い。人間の平均寿命に相当する平均使用年数は、乗用車は約13年だが、普通貨物車は18年を超えている。バスは19年だ。使われる期間が長いと、新車で装着の義務化が進んでも、古い車両が多いから保有台数全体に占める装着率は高まりにくい。
トラックならではの課題もある。たとえばトラックが走行中、乗用車に急な割り込みをされたとする。衝突被害軽減ブレーキは強めの緊急自動ブレーキを作動させるが、このときの制動力が強いために、荷崩れを生じさせることもある。これを懸念して、衝突被害軽減ブレーキのスイッチを切るドライバーもいるという。
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衝突被害軽減ブレーキの作動をカットしたのでは意味がないが、荷崩れを抑えたい事情も理解できる。トラックの衝突被害軽減ブレーキでは、センサーの視野を広角化してAIも使い、周囲の車両の挙動変化を予想して早期に制動を開始するなどの工夫も必要だ。ドライブレコーダーから衝突被害軽減ブレーキまで、トラックの車両挙動や使われ方に適した装備のセッティングが求められている。
トラックが交通事故を発生させると、周囲の車両に甚大な損害を与えるから、早急な対応が必要だ。乗用車については、設計の新しい車種になると、ドライバーから見えない死角をモニター画面に映す機能なども採用されている。乗用車で進化した先進安全装備をトラックに展開させることも大切で、自動車工業会などがメーカーと先進安全装備を手掛けるサプライヤーを仲介することも考えたい。