この記事をまとめると
■重い消防ホースの運搬を支援する電動リヤカー「クロスクイッカー」をヤマハが製作
■ヤマハモーターエンジニアリングの消防事業40年のノウハウが随所に活かされた設計
■80%の負荷軽減や段差走破性など現場での即戦力に期待される
電動化は防災も助ける
ガソリンエンジン原理主義のみなさんにとって、クルマでもなんでも電動化というのは癪にさわるニュースかもしれません。が、リヤカーが電動化して、消防活動をサポートしてくれるというのはどうでしょう。これは、放水車から消防ホースを延長していく際に使われるもので、電動自転車PASでお馴染みのヤマハが製品化したもの。
じつは消防ホースは1本8kgで、10本もまとまると相当な重さ。これを迅速に消火現場まで運ぶために、電動アシストカーが開発されたというわけ。ちなみに、ヤマハは消防事業を始めて40周年というエキスパート。そんな彼らが作った電動リヤカーをチェックしてみましょう。
消防車とX-QUICKER画像はこちら
「X-QUICKER(クロスクイッカー)」と名付けられた電動アシストカーは、一見すると消防ホースを運ぶ普通のリヤカーかのようなスタイル。正式にはホースカーと呼ばれる機材で、消防車(ポンプ車など)から火災現場の最前線までホースを延長・運搬するためのもの。前述のとおり、ホースは見た目よりも重量があり、本数が多くなれば人力で牽引するのはかなり大変な作業。平坦な現場ならまだしも、坂道や段差、障害物などがあればより困難になるのはいうまでもないでしょう。
ホースカーを牽引しているイメージ画像はこちら
そこで、ヤマハの消防事業を担うグループ会社のヤマハモーターエンジニアリング社が電動アシストカーを開発。クロスクイッカーは、さすが消防事業40年を誇るだけあり、リヤカーを単純に電動化しただけではありません。そこには消防向けという特殊な事情を反映した、同社ならではのノウハウが注ぎ込まれているのです。
たとえば、ハンドルを引くだけでアシストが開始されるという直感的な使い方ができる一方、ごく自然なアシストにこだわったとか。アシストパワーについてもパワフルというだけでは消火現場でもてあましてしまうため、絶妙なバランスを得るための試行錯誤が繰り返されたといいます。その結果、負荷を80%軽減するアシストとされ、3度の登坂路を100m進んだ場合、(アシストなしとは)8車身の差が付くことに。一刻を争う消火活動にとって、この差はあまりにも大きなものといえるでしょう。
坂道を登るX-QUICKER画像はこちら
また、現場での走破性というのも抜かりありません。外径512mmの大径タイヤを採用し、火災現場の散乱したホースや路面上の溝、段差も乗り越えが可能となっています。このあたり、ヤマハのオートバイづくりのノウハウが活かされているのはいうまでもありません。なお、充電については消防車の電源を利用可能ですので積載した状態で簡単に充電可能。航続距離に関しても、満充電で約20km(約4時間)の連続走行とのことですから、かなりハードな現場にも対応できそうです。
大径タイヤを採用画像はこちら
ヤマハモーターエンジニアリングは、この電動アシストカーのほかにも、電動式乗用ホースレイヤーやセロー250をベースにした災害救助活動二輪車などさまざまな製品をラインアップしています。消防マニアだけでなく、防災活動などに興味がわいたらぜひチェックしてみてはいかがでしょう。