この記事をまとめると
■2000年代初頭の中国タクシーはVWサンタナが主力だった
■近年はBEVが主流となり、地元メーカーの存在感が拡大しつつある
■都市ごとに異なる車種構成があり、中国市場の多様性が垣間見える
かつて中国のタクシーといえばフォルクスワーゲンだった
筆者が中国へ出かけ始めた2000年代前半からしばらく、中国のタクシーといえばVW(フォルクスワーゲン)サンタナが定番であった。
サンタナといえば、1984年から1990年の間に日本でも日産自動車の座間工場でノックダウン生産されていた。中国においては、いち早くVWは上海汽車との合弁会社「上海大衆(大衆はVWの意味)」を設立し、サンタナの中国国内での生産を開始した。
フォルクスワーゲン・サンタナのフロントスタイリング画像はこちら
筆者が中国を訪れはじめたころは日本で見かけたサンタナとは異なる「サンタナ2000」というモデルが主流であり、ちょうど「サンタナ3000」というモデルがデビューしたばかりであった。そしてさらに2008年には「サンタナ・ビスタ」へバトンタッチした。あくまで聞いた話では、金型が擦り切れるまで生産を続け、金型を変える段階で2000へ、そして3000へと改良を進めていったとのことである。その初代サンタナは、モデル末期には上海大衆本体から系列のメーカー生産に切り替わり、2013年にて生産終了となった。
2代目サンタナは、サンタナ・ビスタと併売するかたちでデビューした。VWの本拠地であるドイツ・ウォルスブルクで開発された2代目は、初代よりは少々小ぶりなモデルとなっていた。ただ、上海万博開幕のタイミングで上海市内のタクシーはVWトゥーランが大量にタクシーとして投入されており、2代目サンタナのタクシーはかなり限定的であったと覚えている。
フォルクスワーゲン・トゥーランのタクシー画像はこちら
多くの都市ではサンタナのタクシーがメインだったのだが、首都北京は少々違っていた。VWの車両が使われていたのだが、サンタナよりは格下といっていいジェッタが使われていた。筆者が初めて北京を訪れたのは2006年なのだが、その当時の北京でタクシーとして使われていたジェッタはゴルフIIベース(日本では1985年から1992年まで輸入販売されていた)だったので驚いてしまった。
フォルクスワーゲン・ジェッタのフロントスタイリング画像はこちら
すでに顔つきの変わった「ジェッタ・キング」という後継モデルは登場していたのだが、筆者はこのジェッタのタクシーが気に入ってしまい、タクシー乗り場ではわざわざジェッタに乗ることができるように調整していた。このジェッタは2013年までラインアップされていた。
北京では、中国・東風汽車とシトロエンの合弁会社、「東風シトロエン」で生産されていた、ZXのセダン版ともいえる「C-エリゼ(またはエリゼ)」という車両のタクシーも印象深かった。かなり後年になって、武漢で走行距離40万kmというCエリゼのタクシーに乗る機会があったのだが、それでもしっかりフランス車らしいしなやかな足まわりが生きていたことに驚かされた。
シトロエン・C-エリゼのフロントスタイリング画像はこちら
その後筆者が訪れた都市では、韓国のヒョンデまたは起亜自動車のタクシーが目立つようになり、新型コロナウイルス感染拡大直前には、BEV(バッテリー電気自動車)タクシーが増加。華南地区の広州市でも、北京汽車の脱着式バッテリー仕様のフリート販売専用車のタクシーなど、中国メーカー車の存在感が増している。