エミッション性能など課題も残る
一方で、課題もある。燃焼室内でピストンが上昇してくる間に燃料を供給するので、同時に導入する空気との混ざり具合をシリンダー内でもっと促進しないと、いざ点火プラグで着火という段階で混合気が均一になりきらない恐れがある。それは燃料の燃え残りを意味する。
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対策として、空気だけを吸気ポートから導入する際に渦をつくり、ガソリンが噴射されたときに混ざりやすくする。さらに点火プラグで着火しやすくするため、ピストン頭頂部に凹みを設け、そこを空気が流れることによる渦でガソリンとよく混ぜて、火の点きやすい状態にする。
ところが、ピストン頭頂部に凹みをつくると、燃焼室内の形がゆがみ、燃焼の段階でガソリンの燃え残りが生じる懸念がある。
ガソリン直噴とすることで無駄のない燃料供給をしても、燃え残りが出ては、期待するほど燃費向上の効果が出ない懸念が残る。そこで、供給する燃料をより少なくしても燃やせるピストン頭頂部の形状の研究が不可欠なのだ。
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それでも燃え残りがあれば、ディーゼルエンジンと同じように粒子状物質の排出が考えられる。そのため、たとえば欧州では、直噴の場合はガソリンエンジン車でも粒子状物質を大気へ出さないフィルターの装備が義務付けられている。
そもそもクルマへのガソリン直噴の採用は、1954年のメルセデス・ベンツ300SLが最初とされる。それでも、三菱のGDIは量産車への適用として世界初といえる。それをきっかけに、直噴は世界的な採用へ広がったが、二酸化炭素(CO2)の排出量はポート噴射に比べ減らせても、粒子状物質という別の有害物質の排出がディーゼルエンジン同様に生じてしまうことになった。