競合車種は「お客様次第」
となると、やはり新型ムーヴは前述の軽セミハイトワゴンたちを競合車種に見定めて開発されたのだろうか。チーフエンジニアの戸倉宏征氏に尋ねると、意外な答えが返ってきた。「特定のメーカーの特定のクルマを競合として捉えてはいません。」
新型ムーヴのチーフエンジニア・戸倉宏征氏画像はこちら
戸倉氏曰く、軽セミハイトワゴン市場は、どのメーカーのモデルが飛び抜けて売れているという傾向は少ない拮抗状態にある。その状況下で、いま旧型の軽セミハイトワゴンを保有するユーザーの乗り換えを促進する切り札、それがスライドドアだったというのだ。実際に、ディーラーにてムーヴにスライドドアを求める顧客は数多かったという。
新型ダイハツ・ムーヴのスライドドア画像はこちら
では、やはり競合は軽セミハイトワゴンなのでは……? と喉もとまで出かかったが、戸倉氏はこう続ける。「じつは、新型ムーヴがセミハイトワゴンに競合するか、スーパーハイトワゴンに競合するかはお客様次第で、我々としてもわからないところがあります。販売状況を見てこれから判断してゆくつもりです。」
ヒンジドアを採用していた先代までのムーヴを検討する顧客は、スライドドア採用の軽スーパーハイトワゴンも同時に検討しているケースがかなり多かったが、そこでユーザーにとって最大の障壁となるのが車両価格だったという。そこで、新型ムーヴには訴求力の高いアイテムであるスライドドアを採用しながらも、税込135万円からという安価なプライスタグを掲げることで、そのようなユーザーの囲い込みを狙ったということだろう。
新型ダイハツ・ムーヴの最量販グレード「X」画像はこちら
補足であるが、多くの方が抱いたであろう「同じダイハツのタントやムーヴキャンバスと競合しないの?」という疑問については、ターゲティングユーザー層が大きく異なることから棲みわけがなされているとのことだった。
価格とサイズを軽セミハイトワゴン級に抑えながらも、軽スーパーハイトワゴン系にしか装備されないスライドドアを装備することで、両方の市場に食い込んでゆくかもしれない。新型ムーヴは、そんなダイハツ自身も予想しきれない可能性を秘めたそれはクルマだということだ。