成功とは言えないけどコイツがあったからフリードが大ヒットしたのよ! 小さいボディで7人乗りを実現したホンダ・モビリオは挑戦者魂の塊!!

この記事をまとめると

ホンダが2001年に発売したミニバンがモビリオだ

モビリオは電車のような四角いボディと大きな窓ガラスが特徴

■全長4mそこそこの車体で3列シートを実現していた

路面電車から発想を得た四角いボディのモビリオ

 モビリオは、ホンダ(本田技研工業)が、2001年に新規発売した小型ミニバンだ。5ナンバーで7人乗りということで、期待を集めた。

 外観はとても独創的で、ほかのミニバンやハイトワゴンなどとは一線を画した存在感があった。それもそのはずで、この造形は意図的であり、あえてクルマらしさを追わず、欧州などで広まりはじめていたトラム(市街地の路面電車)から発想を得ているのである。

 もちろん、好き嫌いといった嗜好の差はあるだろう。だが、まさに電車のように四角い外観で、大きな窓ガラスをもつ造形は、視界がよく運転しやすそうに思える。

 5ナンバーミニバンとしてステップワゴンがホンダにはあるが、今日でいうハイトワゴン的な小型車で7人乗りというのは、毎日使うクルマとして親近感をもたらす。そしてステップワゴンほど背の高くない姿は、取りまわしがよさそうだ。

 ステップワゴンは大人気を呼んだ5ナンバーミニバンではあるが、その背の高さは3ナンバーミニバンのオデッセイと比べても重心の高さを実感させ、必ずしも走りは軽快とはいいがたかった。

 モビリオの後ろのドアがスライド式である点も、ハイトワゴンやミニバンとして不可欠な要素であり、あらゆる点で消費者の期待を全方位で答えるクルマであったといえる。

 一方、全長が4mそこそこの車体で3列シートを実現するのには苦労したようだ。というのも、3列の座席それぞれに人が座れる位置に前後スライドを調節すると、前後ドアの間の支柱(Bピラー)が2列目座席の足もとにきて乗り降りを難しくした。つまり、座席の空間として7人が座れても、そもそも2列目への乗り降りができなくなっては意味がない。

 実用上、3列目はあまり使われないだろう。しかし、7人乗りとの振れ込みであれば、何かの折には7人乗車を期待することになる。現実的に2列目までの座席が主で、後ろは荷物を入れる場所として3列目の座席を使わないのであれば、2列シートで5人乗りに割り切ったハイトワゴンでよいことになる。

 あとから発売された5ナンバーのフリードも3列シートだったが、モビリオに比べ車体全長を145mm伸ばし、Bピラーの位置も調整され、2列目の座席への乗降性が改善された。

 モビリオは、消費者の日常を考え、ホンダらしい独創の精神から生まれた5ナンバーの小型ミニバンだったが、やや思いばかりが先行した仕立てとなり、1世代限りで2008年に生産を終了する。その意志を継いだのがフリードだ。

 ちなみにモビリオという車名は、アジア向け車種として6年後に復活している。


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御堀直嗣 MIHORI NAOTSUGU

フリーランスライター

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