この記事をまとめると
■ナッシュ・メトロポリタンは女性ユーザーの需要を狙ったコンパクトカー
■キュートなデザインが魅力で英国生産ながらアメリカ市場で成功
■高価格や個性的な走行性能も含めて唯一無二の存在感をもつ1台
かわいいクルマが女性に好まれるのは万国共通!?
女性がコンパクトで可愛らしいクルマを好むのは、いまも昔もさほど変わらないようです。戦後のアメリカも同様だったようですが、このニーズを目ざとく捉えたニッチなモデルが一世を風靡したことがあります。
ナッシュ・メトロポリタンは、ビッグ3があえて踏み込まなかったマーケットに躍り出て、目論見どおりの大ヒット。よく見れば、なるほど現代でも十分通用する可愛い仕上がりに納得してしまうはず。
ナッシュ・メトロポリタンのフロントスタイリング画像はこちら
ナッシュは創業こそ1917年と老舗っぽいのですが、1957年には消滅というなかなか波乱万丈なメーカー。ですが、先見の明というか、革新的なことに挑戦する気概に満ちており、モノコック構造やベンチレーションシステム、シートベルトといった機構を早くから採用していたりするのです。
メトロポリタンについても、開発前にプロトタイプを作ってアメリカ国内で内見ショーをたびたび開催。その都度アンケートを催して、実車に反映させるというプラクティカルな商売だったとされています。
ナッシュ・メトロポリタンは、当時のアメリカンスタンダードに比べるとじつにコンパクトなサイズですが、これは冒頭に記したとおり女性ユーザーを意識したもの。戦中から戦後にかけて、女性の社会進出が活発となり、マーケットに対する彼女たちの存在感が大きくなった、ということに目をつけたわけです。
ナッシュ・メトロポリタンのリヤスタイリング画像はこちら
前述のアンケートでも彼女たちの声は重要視され、プラスチックのサイドウインドウは安っぽいだの、フロアシフトは古臭い(当時の流行りはコラムシフト)、といった声が生産仕様に多く取り入れられています。また、女性ならではの声として、取りまわしのよさや高燃費といったポイントも抜かりなく対応。
当然、デザインについてもアンケート結果に沿い、ナッシュが得意としていたエアフライトと呼ばれる滑らかな曲面を使ったモノコックで、マイナーチェンジ後には大戦中の戦闘機をイメージさせるようなツートーンカラーも導入。ゴージャスで可愛い、と女性たちからは大好評だったとか。これには、デザインを担ったウィリアム・フラジョールもしてやったりと思ったに違いありません。
ナッシュ・メトロポリタンのインテリア画像はこちら
2シーターとして企画されたボディサイズはいまの基準でもコンパクトなもので、全長×全高×全幅は3797×1562×1384mm、ホイールベースは2159mm。ロードスター(NA)の全長3955mmに比べてもかなり小さいことがイメージできるかと。そのぶん、リヤのトランクスペースはミニマムで、初期モデルは外から開けられるフードさえ省かれていました(車内後部のハッチを通じて荷物の出し入れが可能)。
ナッシュ・メトロポリタンのトランクスルー画像はこちら