この記事をまとめると
■訪日外国人が驚くタクシーの自動ドアは日本独自の接客文化の象徴
■ドア開閉による事故や操作ミスが現場では課題となっている
■ライドシェア普及で「自動ドアのない未来」も現実味を帯びてきている
タクシーの自動ドアは日本特有の文化
インバウンド(訪日外国人観光客)が日本に来て、「アメイジング(すごい)」と思うことのひとつに、タクシーの自動ドアがある。そもそも日本では助手席といわれるように、その昔、タクシーの運転席の隣の席には「助手」が乗っていて、乗客の乗降時にはその助手がリヤドアの開閉サービスをしていたと聞いている。
タクシーのほか社用車やハイヤーニーズの多かった初代クラウンは、より効率的にリヤドアの開閉サービスができるように観音開きドアを採用したともいわれているのだ。
初代トヨタ・クラウンの観音開きドア画像はこちら
その後、1964年の東京オリンピック開催のタイミングでタクシーへの自動ドア採用が一気に広がっている。諸外国のタクシーは利用者自らがドア開閉するのが大原則、そんな海外からきてタクシーに乗ろうとしたらドアが勝手に開くというのは確かに「アメイジング」である。
ただし、タクシーに関する事故ではこの自動ドアの開閉が原因のものも多く、「自動ドアではなければ事故も減るのに」という現場の話も聞いたことがある。自動といってもビルや店舗のようにセンサーが自動感知して開くものとは異なり、運転士の任意操作で開閉を行い、利用者がドア開閉を行わないという意味で「自動ドア」となっている。
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ドアを開けたらそこに自転車やバイクが突っ込んでくるといった事故は、ヒンジドアタイプのタクシーではよくあること。そのため、路上に停めるときには前方を歩道に寄せて二輪車がすり抜けできないように停めると教える事業者も多い。
また、着物やドレスの裾をドアで挟んでしまうということも意外なほどあるようだ。利用者がしっかり乗車できたかを確認しながらドアを閉めるのが基本なのだが、徹底できていないこともあり、時にはドアで挟んでもいないのに「足が挟まった」とクレームをつけられることもあるようだ。
東京都内ではすでにタクシー車両として当たり前のように走っているのが、トヨタのJPNタクシー。後部ドアはスライド式なので、一般的なミニバンのようにオートクロージャー機能で開閉しているのかと思いがちだが、この電動スライドドアも運転士の任意操作で開閉を行っているのである。
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ヒンジドアタイプの自動ドアでもっともスタンダードなのが、レバーで開閉操作を行うものとなるのだが、それは運転士の操作次第でと勢いよく開閉することもできる。ところがJPNタクシーでは、任意操作とはいえ電動式となるので開閉にある程度時間を要する。そのため、お客が車内に入ったタイミングで「見切り発車」を行う運転士も目立っているのだ。
JPNタクシーはスライドドアなので、ドアを開いたときに二輪車がぶつかるということはなくなったが、乗客が降りた瞬間に二輪車と衝突するなど、新たなタイプの事故を誘発しているとも指摘されている。いずれにしろ、運転士の十分な安全確認をしたうえでの操作という大前提が履行されていないことが事故原因とはなる。
タクシーが路肩でドアを開いているようす画像はこちら