国交省が大マジメに検討するSFのような物流システム! 自動物流道路ってなに?

この記事をまとめると

■国土交通省が計画しているという「自動物流道路」について解説

■オートメーションで稼働する輸送用機器の専用レーン網を構築する計画だ

■一部区間では「自動物流道路」設置について具体的な検討を始めた

新たな物流システムの実現を目指す

 国土交通省が「自動物流道路」を計画しているという。字面からなんとなくイメージはできるものの、具体的な内容を想像するのは簡単ではない。公開されている資料を要約すると「中央分離帯、路側、地下などといったこれまで利用されていない空間に、無人化、自動化、機械化、DX化などを図った輸送手段の物流専用帯を構築し、物流の効率化・最適化を行う構想」とのことだ。もう少し噛み砕けば、「オートメーションで稼働する輸送用機器の専用レーン網を構築する計画」だと解釈できよう。

 背景には2024年問題によるトラックドライバー不足や環境問題に加えて、ECサイトの発達により小口荷物が増加傾向にあることが挙げられる。現状を放置すると、遠からずわが国の物流は荷物を捌ききれなくなって崩壊しかねない。すでにトラック、鉄道、船舶、航空機といった既存の物流手段を、従来の延長線上で運用していては、対応しきれなくなることが目に見えているのである。

 そこで、行政では道路を多様な価値を支える多機能空間へと進化させるために、道路空間を活用した人手によらない新たな物流システムとして、「自動物流道路」を実現させるべくプロジェクトを始動させたのだ。すでに、海外では「自動物流道路」について、具体的な検討に入っている国が複数存在する。

 たとえばスイスでは、主要都市間を結ぶ地下トンネルに自動運転カートを走行させる物流システムを検討している。また、イギリスでは低コストのリニアモーターを使用した完全自動運転による物流システムの構築を目指しているのだ。

 わが国でもこれらの事例を参考に、
・増加する荷物や不足するドライバーなどの問題を踏まえて、今後も拡大する物流ビジネス需要に応え、民間資金を導入しつつトラック輸送をサポートする
・クリーンエネルギーで環境に優しい持続可能な物流を実現する
・既存システムとの調和を図りつつ、ロジスティクス改革に貢献する
などといったことを掲げて、「自動物流道路」実現に向けた検討会を設けたのだ。

 これを受けて、ネクスコ中日本では東名高速道路、新東名高速道路を対象に、「自動物流道路」設置の可能性について具体的な検討を始めた。たとえば、地上部で構築をする場合は既存道路外側と中央部に設置することを想定し、道路の拡幅や新たなトンネルの建設などの必要性を課題として挙げている。また、地下部で設置を想定した場合は高架橋梁の基礎杭を回避して、トンネルを建設しなければならないことなどを、課題として抽出しているのだ。

 完成した「自動物流道路」には、以下のような無人の運搬機器が行き交うことを想定している。

自動運転トラック
現状の大型トラックがベースになるので移動速度は速いが、排気ガスなどの換気が必要。

自動配送ロボット
100サイズ以下の荷物を36個分程度搭載可能だが、時速は15km/h程度。

無人搬送車(AGV)
500kg~1t程度の積載量があり、時速は10~20km/h。

自動運転カート
搭載は300kg程度だが1t程度を牽引でき、時速は10km/h。

 これらはまだまだ改良の余地があり「自動物流道路」ができるころにはさらに高性能な運送機器が登場していることも考えられる。まるでSF世界のようであるが、実現の道筋が見えてきているといえるのではないだろうか。


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