この記事をまとめると
■スズキ軽の主力3気筒エンジンであるR06AとR06Dについて解説
■R06Dは高効率を追求したロングストローク設計の新世代エンジン
■現状ではターボはR06A、NAはR06Dと役割が明確にわかれている
2種類が用意されるスズキの軽自動車用エンジン
スズキの軽自動車を買おうと検討しているとき、スペーシアやワゴンR、ハスラーといったモデルのカタログスペックを調べていると、エンジンの型式欄に「R06A」と「R06D」とふたつの表記があることに気づくだろう。
たとえば、スペーシアギアの主要諸元をみると、ターボ仕様のエンジン型式はR06Aとなっており、NA(自然吸気)仕様のエンジン型式はR06Dとなっている。いずれも「水冷4サイクル直列3気筒」という形式は共通だ。
スズキ・スペーシアギアのフロントスタイリング画像はこちら
そういえば、スズキのホットハッチ、アルトワークスのエンジンもR06Aだった。では、R06Aはターボ仕様のみに使われる型式なのだろうか?
その答えは「ノー」だ。
R06Aエンジンの初登場は2010年だったが、その当時はR06AエンジンにターボとNAの両仕様が存在していた。R06A誕生以前、スズキの軽自動車で使われていた主力エンジンはアルミブロックのK6Aエンジンだったが、その思想を正常進化させた超軽量・高効率エンジンとしてR06Aは生み出された。
コンパクトに収まるR06Aエンジン画像はこちら
メカニズムの特徴はVVT(可変バルブタイミング機構)を備えていること。ターボは吸気側のみVVTを備えるが、NA仕様は軽自動車として初めて吸排気VVTを装備したエンジンとして、デビュー時にはインパクトをもって迎えられたと記憶している。
では、R06AとR06Dの違いはどこにあるのだろうか。それはボア×ストロークと排気量にある。以下に、その数値を記してみよう。
(型式:ボア×ストローク(mm):総排気量(cc)
R06A:64.0×68.2:658
R06D:61.5×73.8:657
一目瞭然、R06Dはスモールボア×ロングストロークのまったく違うスペックになっている。R06Dは2020年に誕生したエンジンであり、R06Aの進化形といえる存在。吸排気VVTを備える点や基本設計などはR06シリーズとして共通部分も多いが、ボア×ストロークが異なるということは、エンジンとしては異なるキャラクターとなっているといえる。
簡単にいえば、スモールボアは熱効率に有利で、ロングストロークはトルクを感じやすい設計となる。燃費や環境性能を求めるにスモールボア×ロングストロークを選択するというのは、現在のエンジン設計においては常套手段ともいえる。
ボア・ストロークのイメージ画像はこちら
ただし、ボアが小さいということは、バルブのサイズも制限されるため、パワーを求めるには不利な面も出てくる。ターボチャージャーによって過給した空気を押し込もうとしても入り口である吸気バルブが小さければ、思うように入っていかないことは想像できるだろう。そうした部分も考慮して、ターボ仕様は従来からR06Aを継続採用するというのが、最近のスズキ車では定番となっている。
それでは、最新のスズキ車においてNAエンジンはすべてR06Dに置き換えられているのかといえば、キャリイやエブリイといった軽商用車(エンジン縦置きモデル)にはNA仕様のR06Aも残っていたりする。