ハードルを下げてまでタクシー運転士に外国人を積極採用……ってマジか! 日本語が若干苦手でも英語が話せればOKの考えはアリ? (2/2ページ)

これからのタクシードライバーに英語力はマストか

 ところが日本は、ほかの先進国ほど都市設計が行き届いていないので、番地などで伝えるよりも、「●●郵便局の近く」など、ざっくりしたランドマークを告げてとりあえず目的地に向かってもらうという乗り方も多く、海外のライドシェアのようなデジタルツールの普及もいまひとつなので、やはり日本語能力の有無というものは気になってしまうのかもしれない。

 若い世代の運転士ではカーナビを積極活用しているが、タクシー運転士が目的地までの経路を乗客に確認しなければならない。カーナビで最短ルート検索しても、「そのルートでは不吉だ」と客から自分のお好みルートを通るよう要求されることなども多いからだ。

 日本語もさることながら、日本は英語教育に問題があるのか、Z世代などとも呼ばれる若い世代であっても、誰でもスラスラと英会話ができるという状況ではない。いまどき中国の都市部の若者ならば、ネイティブ英会話ができて当たり前だし、東南アジア各国でも、ホテルなどではなくとも、英語でコミュニケーションが取りやすいのだが、日本はその点において、インバウンドはコミュニケーションに困っているようにも見える。タクシー運転士の世界も状況は同じだ。

 それでも異業種からの比較的若い世代の転職者も増えてきており、そのようななかで、語学力のある運転士は富裕インバウンドが多く宿泊する東京都内の五つ星外資系ホテル専属だったり、たまたま乗り合わせた富裕インバウンドからの貸切乗車予約などを得やすく、おいしい仕事にありつくことができていると聞いている。

 縁あって海外からタクシー運転士を呼び込むことになったのだから、英語が母国でも公用語としてよく使われる国から労働者を呼ぶというのも、そう考えるといいのかもしれない。

 たとえばフィリピンやインドでは国内で英語がよく使われている。事実、筆者はインドへ行くと英語でコミュニケーションをはかっている(デリーではヒンディー語がもっと地元には根付いているようであり、ヒンディー語を覚えろと地元のひとにいわれたこともある)。

 ただ、インドやフィリピンは、すでにアメリカ企業のアメリカ国内のコールセンター業務を担っていたりもする(アメリカ国内で電話をするとインドやフィリピンにコールセンターが置かれていてそこに繋がり対応する形)ので、日本がいまさら入り込む余地はないのかもしれない。フィリピンからアメリカへ看護師として出稼ぎにいくフィリピンのひともいると聞く。アメリカの富裕層向けの介護施設などで働くと稼ぎがよく、出稼ぎでありながら、マイカーとして現地でレクサスに乗っている……ということもあるそうだ。

 それならば、インドネシア人やベトナム人であっても、英語による基本的な会話力を身につけたひとを採用するというのもありかもしれない。新興国では外国語が話せることは好条件の職に就きやすくなり、即収入アップにつながる。観光業だけではなく英語やフランス語、ドイツ語、そして日本語が話せれば、それら外資系企業の現地法人に勤務することができるからだ。そしてもちろん、「外国語を覚えよう」という向上心のあるひとのほうが、採用する側目線で見ても好印象なのは間違いない。

 すでにほかの先進各国でも、タクシー運転士というのは働き手不足となって久しいと考えていいだろう。そして移民がその不足の穴を埋めているのが実情だ。日本もいまの流れを見るに、本格的な移民社会へ舵を切ってきているように見える。

 とはいえ、自動運転タクシーというものがいよいよ本格化しようとしているなかでは、外国人運転士はその過渡期の対策となるともいえる。技能実習生は滞在期間が決められているからだ。

 一方で、日本で得られる収入自体が、他国に比べると際立って魅力的なわけではないが、タクシー運転士は歩合給が高いことに外国人も注目している。そのなかで日本を目指す外国人は、諸外国と比較して際立って安い医療費などといった、高い社会保障制度に魅力を感じているという。

 より優秀な人材を海外から得ようとするならば、やはり国内定住を前提とした移民という形のほうが望ましいのかもしれない。


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小林敦志 ATSUSHI KOBAYASHI

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