世界で幅広く見られるダブルデッカーバス
ダブルデッカーバスといえば、ロンドンバスが有名なところ。いまでは中国BYD(比亜迪)のBEV車両も導入されており、長年ロンドン市民の生活移動手段として活躍している。そのほか香港でも長らくダブルデッカーバスが街なかを走っており、こちらも車両電動化が進んでいる。
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アメリカ・ネバダ州ラスベガスでも、ダブルデッカータイプの路線バスが観光客の市内観光での移動手段として重宝されている。そのほか筆者は、マレーシアでもダブルデッカータイプの路線バスに乗ったことがある。夕方の帰宅ラッシュ時だったためか乗降にやや難があるようには見えたものの、1回の運行でより多くの乗客を輸送できるという面で効果があるのは異論のないところだろう。
日本では、市内路線バスとしてのダブルデッカーバスの運行は筆者が知る限り行われていないが、高速路線バスや観光バスとしては活躍している。日本では車両について3.8mという車高の上限規制があり、これがダブルデッカーバス普及の足かせとなっている。それでも2010年までは三菱ふそうがダブルデッカーバスをラインアップしていたが、いまでは国産ダブルデッカーバスは存在せず、スウェーデンのスカニア社が販売するのが「日本で唯一の2階建てバス」となる。
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市内路線バスに限っていえば、全国的に利用者の減少傾向に歯止めがきかないことや、運転士不足などもあって減便や路線廃止が相次いでいるが、沿線に企業や大学、高校などが多くある路線では利用者がかなり多い。
そのような路線では、輸送力増強のために大型路線バス2台で同時刻運行することも多いようなのだが、昨今の運転士不足でそれもままならず、ダブルデッカーの代わりとして連節バスの導入が目立ってきている。こちらはいすゞと日野の合弁バスメーカーである「Jバス」がラインアップし(いすゞ・エルガデュオ/日野ブルーリボン・ハイブリッド連節バス)、さらにメルセデス・ベンツ シターロの連節バスも国内で活躍している。
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連節バスはトレーラートラックのような牽引車両ではないので、大型二種免許があれば運転可能なのだが(まっすぐ走るほうが大変らしい)、運行開始するのにはさまざまなハードルが存在する。そもそも全長12mという日本の保安基準をオーバーすることもあるので、そのような場合は問題なく走行できるルートに限定して運行が認可されることになる。
また、地域の警察によって細かい判断も異なるようで、場所によっては先導車を走らせないと運行することができないというところもあると聞いている。車両導入にあたっては、すでに導入している事業者の協力により運転士の研修を行うとも聞いたことがある。
バス利用者の減少が目立つこともあり、今後は大型から中型へダウンサイズするといった動きが目立ってくるともいわれるが、前述したように沿線環境によっては大量輸送能力が求められるケースも依然として存在する。また、自家用車がなければ日々の移動に困るといった地域であっても、いまの若年層では運転免許を取得しないことも多く、路線バス利用への回帰現象がすでに一部地方都市で発生しているケースもあるとのこと。
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とはいうものの、ダブルデッカーであれ連節バスであれ、つくづく日本という国は細かい規制の多い国だと痛感させられる。理由なく規制が設けられているとは思えないのだが、なにか新しい発想で取り組もうとするとさまざまな規制が立ちはだかるのは、バスだけではなく「日本あるある」的光景といえよう。