ジムカーナなら庶民でも全日本に参戦できる!? 参戦費用のリアルを出場選手に聞いた (2/2ページ)

多大なコストを押してでも熱中する価値のあるジムカーナの魅力

 一方、四輪駆動のB・SC車両を対象とするBC3クラスは、全日本ジムカーナ選手権の最高峰クラスということもあって、ランニングコストは高く、同クラスにGRヤリスで挑む一色健太郎選手は「積載車両が必要になってくるし、メカニックも必要なので、だいたい年間で350万円はかかっていると思います」と語る。

 しかも、この金額はタイヤ代と油脂類を除いた金額で、一色選手によれば「タイヤやオイルはサポートをうけていますが、もし購入するとしたら、追加で200万円ぐらいかかると思います」とのことだ。

 さらに、B車両は車検対応の範囲、SC車両はナンバーなしの範囲で自由に改造できることから、BC3クラスはハード面でもかなりの予算が必要になっているようで、「最低限の改造なら、ベース車両に200万円をプラスすればBC3クラスに出場できると思いますが、上位を争うつもりなら1000万円ぐらいの費用は必要になってきます。僕のクルマもエンジンは1750ccキットを入れているんですけど、部品だけで130万円はかかるし、ミッションも150万円、クラッチも100万円ぐらいかかっています。僕が乗っているクルマはATSのデモカーという位置付けなので多くのパーツをサポートしてもらっていますが、なにもサポートを受けない状態で作ろうとしたら1500万円ぐらいはかかっていると思います」とのことだ。

 入門向けのカテゴリーとはいえトップクラスはドン引きするレベルの車両コストだが、前述のとおり、比較的にリーズナブルなPNクラスでも年間のランニングコストは100万円が必須である。一般の会社員にとって100万円はなかなかの金額だが、それでも全日本ジムカーナ選手権に参戦し続けるのは、やはり同シリーズに魅力があるからにほかならない。

「人と競って客観的な順位が付く競技が好きなんですね。スキーのタイム競技ができればそれでもよかったけれど、クルマが好きということもあって僕はジムカーナでした。やっぱり、タイム争いは面白いですね」と、一般企業の会社員ながらPN1クラスに挑む矢島選手が語れば、普段は大学の事務員として働きながらPN2クラスに挑むSHUN選手も「自分のドライビング技術が進化していることがタイムでわかるし、セッティングによるクルマの動きの変化も生き物みたいで楽しいです。データをもって予想しながらセッティングをするところが面白いですね」と語る。

 さらに、農業を営みながらPN3クラスに挑む野島選手は、「イメージどおりに走れたときの充実感はジムカーナならではの魅力だと思います。それに優勝したときの喜びは格別ですね」とコメント。

 そして、製造業の会社に勤務しながらBC3クラスに挑む一色選手は、「収入のほとんどをジムカーナに注ぎ込んでいますが、人生のなかで“日本一”になれることってあまりないですよね。クルマが好きなので、ジムカーナなら日本一を目指せるかも、というところからはじまって、実際にシビックでチャンピオン(注:2019年全日本ジムカーナ選手権・SA1クラス)になれたし、今度はGRヤリスでタイトルを取りたいと思ってチャレンジしています」と語る。

 さらに、一色選手は「クルマの運転がうまくなれば一般道でも危険の回避ができるし、クルマの知識が増えれば自分でトラブルにも対応できるようになる。なにより競技会の会場に来れば、普段の生活では会えないようないろんな人に出会えて、いろんな話を聞くことができることも魅力だと思います」と付け加える。

 このようにモータースポーツの入門カテゴリーであるジムカーナは魅力が満載だ。当然、全日本選手権に参戦するためにはそれなりのコストが必要になるが、それでも大人が熱中できるだけの面白さが秘められている。


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廣本 泉 HIROMOTO IZUMI

JMS(日本モータースポーツ記者会)会員

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