なんと24回もチャンピオンになったレジェンド! 山野哲也選手に「ジムカーナ」の魅力を直撃したらクルマ好きなら「やらなきゃ損」な競技だった (2/2ページ)

もっとも手軽なモータースポーツのひとつでありながら奥が深い

──これだけ揃ってくると立派な競技車両になってきますね。ところで、ジムカーナはむちゃくちゃエントリーしやすい競技ということがわかりましたが、最大の魅力はなんでしょうか? 先ほど、ホワイトボードに「運転がうまくなる!!」と書いていただきましたが、どのような意味でしょうか?

山野選手:ジムカーナの魅力はやっぱり運転がうまくなるということです。私がジムカーナを続けている理由はそこにあって、タイムを出すために試行錯誤することでマシンのコントロールがうまくなる。

——マシンのコントロールという意味ではほかのカテゴリーでもスキルアップしますよね?

山野選手:マシンの限界値でコントロールするのはほかのカテゴリーも変わりませんが、ジムカーナの速度域は60km/hぐらいで一般道にかなり近い。たとえばサーキットのレース競技では200km/hの速度が出ることもあるけれど、そこでクラッシュしちゃうとドライバーとクルマに対するダメージが大きい。でも、ジムカーナは速度域が低いので、仮にカードレールにぶつかったとしても、廃車になるようなことはほとんどないと思います。安全マージンを確保しながら、クルマの限界値まで攻めることができるところが、ジムカーナの特徴だと思います。

──なるほど。でも、飽きたりしませんか?

山野選手:飽きないですよ。というのも、ジムカーナのコース設定は自由度が高いので、同じコースで走ることはあまりない。スラロームや180度ターンでも、組み合わせの仕方でいろんなレイアウトができるから、同じオートランドスナガワでも常にフレッシュな気もちでチャレンジすることができる。もちろん、競技当日に発表されたコースを覚えなきゃいけないし、2回目の走行のときに合わせなければいけないから、ビギナーにはハードルの高い部分ではあるけれど、そこが面白いところだと思います。順応力が求められるけれど、競技の経験を重ねていくと、自然と運転の技量は上がっていきます。

──最近は女性ドライバーが増えてきましたし、年配のドライバーも多いけれど、ジムカーナはそんなに体力は必要ないんでしょうか?

山野選手:運動会にたとえると、ジムカーナは“100m走”に近いので、持久力はほとんど必要ないです。私の場合、耐久レースでは3時間連続で走行することもありますが、ジムカーナはどんなに長くても1分50秒ぐらいのコースなので短期決戦です。そのぶん緊張感もあるし、集中力が必要になりますが、そこまで体力は必要ないと思います。

──なるほど。ちなみにジムカーナに運動神経は必要ですか?

山野選手:球技の運動神経と運転の運動神経は違いますからね。ドライビングは操作系の運動神経なので、イメージ的にはジェットコースターのなかで陶芸をやっているような感覚に近いと思います。陶芸では繊細な部分が必要だと思うんですけど、ドライビングもアクセルやブレーキに関してはミリ単位でコントロールする繊細な部分もありますからね。それにモータースポーツは着座スポーツだから、ほかのスポーツと違って足の筋力がそこまで必要ではないから、比較的に高年齢になっても競技を続けることができる。私は今年60歳になるんですけど、その年齢になっても優勝争いできるところも魅力だと思います。

──60歳!? むちゃくちゃ若く見えますね。でも、ジムカーナで運転がうまくなるなら、スポーツカーのオーナーはチャレンジしたほうがいいですよね。

山野選手:運転がうまくなると、一般道での危険回避のテクニックが身に付きます。事故の回避とモータースポーツはすごく似ていて、どちらもフルブレーキングしてステアリングを切る行為ですよね。そういった技量が自然に身につくし、危機管理という意味では、“ここはブレーキを踏んだほうがいい”といった判断力も身につきます。

──それはいいですね。そのほか、ジムカーナのテクニックが役立つことはありますか?

山野選手:ジムカーナで身につけたコントロール技術はほかのカテゴリーに行っても活かすことができます。私の場合はジムカーナを経験してからレース競技にチャレンジしましたが、スーパーGTでもチャンピオンを取ることができました。ちなみに全日本ラリー選手権でもSSベストを取っていますし、全日本ダートトライアル選手権でも優勝していますが、ジムカーナで得た技量はほかのカテゴリーでも通用するので、ステップアップカテゴリーとしてもいいと思います。

 このようにジムカーナ競技は手軽に参加できるほか、経験を重ねることでテクニックが向上。そのスキルはほかのカテゴリーでも通用するほか、一般道での危険回避にも効果を発揮するだけにスポーツカーオーナーはチャレンジしてみてはいかがだろうか?


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廣本 泉 HIROMOTO IZUMI

JMS(日本モータースポーツ記者会)会員

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