軽自動車はあまり儲からない
問題は2023年に3代目の現行型が発売されたときの価格で、2代目が登場した2017年に比べると、標準ボディは約26万円、カスタムターボは約30万円高い。現行型では、標準ボディの装備がシンプルなグレードを廃止して、最廉価グレードの価格が高まった事情はあるが、それでも26万〜30万円の値上げ幅は大きい。
現行型の発売後も、標準ボディが約9万円、ターボは約8万円の値上げを行った。これを合計すると、2025年6月下旬の価格は、2017年の先代型と比べて標準ボディが35万円、カスタムターボは38万円高い。8年間の値上げ幅としては多額だ。
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N-BOXが大幅に値上げされた背景には、複数の理由がある。まず、すべての軽自動車に当てはまる薄利多売の価格設定だ。もともと軽自動車は、小型/普通車に比べるとメーカーや販売会社の受け取る利益が少ない。そのために、利益を削って原材料費などの高騰を吸収することは困難だ。値上げせざるを得ない。
ふたつ目はN-BOX特有の事情だ。ホンダの関係者からは「先代N-BOXは価格のわりに高コストで、販売台数が多いのに儲からない商品だった。そこで現行型はコストと価格のバランスを見直した」という話が聞かれる。
ちなみにN-BOXのライバル車になるスズキ・スペーシアは、標準ボディで上級に位置する(マイルド)ハイブリッドXが170万5000円だ。スペーシアカスタム(マイルド)ハイブリッドXSターボは207万3500円になる。いずれも価格はN-BOXに近いが、スペーシアはマイルドハイブリッドを搭載して、オットマンのように使える後席のマルチユースフラップ、エアコンの冷気を後席へ送るスリムサーキュレーターなどを装着する。スペーシアはN-BOXよりも装備を充実させて収納設備も豊富だから、価格が高くても納得しやすい。
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また、タントは実用装備を充実させた標準ボディのXが161万7000円で、ターボのカスタムRSは196万3500円だ。タントでは運転支援機能が5万5000円のオプション設定で一概に比較しにくいが、左側のピラー(柱)をスライドドアに内蔵させて開口幅を広げるなどの工夫を凝らした。
タントの機能と価格のバランスを見ると、スーパーハイトワゴンではもっとも割安だ。
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以上のようにスーパーハイトワゴンの価格が高まったのは事実だが、とくに人気車のN-BOXが割高になり、スーパーハイトワゴン全体に値上げされた印象が強まっている。購入時にはライバル同士を比較して、買い得度を正確に判断したい。
また、タントカスタムRSの196万3500円のように、200万円を超えない努力も重要だ。このあたりの配慮は、軽自動車を作り慣れたダイハツやスズキが行き届いている。