大阪万博でも結局実現せず! 空飛ぶクルマに世の中がいまいち本気にならないワケ

この記事をまとめると

■大阪・関西万博では空飛ぶクルマが来場者を乗せて敷地の内外を移動するという計画だった

■機体が損傷する事故の発生により空飛ぶクルマのデモンストレーションは一時中止となった

■現時点の空飛ぶクルマは持続的な事業性の見地からも先行き不透明といわざるを得ない

空飛ぶクルマは本当に実現するのか?

 大阪・関西万博に行ったら、誰でも気軽に空飛ぶクルマに乗れる。そんな期待をもっていた人たちは、現状をどう受け止めているのだろうか。当初の予定が大幅に変更されてしまったからだ。

 スマートモビリティエキスポと銘打ち、各種の空飛ぶクルマが来場者を乗せて万博敷地の内外を移動するという計画だった。運航予定機体は、4タイプ。ANAホールディングスのジョビーエビエーション、日本航空・住友商事が共同出資するSoraleによるもの、丸紅のVertical Aerospace Groupによるもの、そして国内スタートアップのSkyDriveだ。

 ところが、日本航空・住友商事の陣営は機体の開発が間に合わないことを理由に大阪・関西万博での運航をあきらめる事態に。さらに、丸紅陣営が当初導入予定とは違う代替機でデモンストレーションを行った際、機体が損傷して部品が落下する事故が発生。安全性を確認するため、空飛ぶクルマのデモンストレーションは当面の間、中止になっている。

 そもそも、空飛ぶクルマとは何か? 定義はないが、一般的には複数のプロペラを電動で駆動する、垂直離着陸機(VTOL)を指す。e-VTOLと表現されることが多い。イメージとしては、大型のドローン、または電動ヘリコプターといったところだ。操縦するには、飛行機の操縦免許が必要であり、クルマという表現に違和感を感じる人も少なくない。

 e-VTOLの構想は1980年代あたりからアメリカなどで発案され、さまざまな実験機が登場してきた。それが2010年代になり、EV向けの大型リチウムイオン電池の開発が進んだこと、半導体技術の発達により機体の姿勢制御が向上したり設計開発プロセスが短縮できるようになり、量産化に向けた動きがグローバルで加速した。

 アメリカでは、自家用車を使ったタクシーサービスで大ブレイクしたUberが、空飛ぶクルマ事業に向けた国際会議を開催するなど、次世代モビリティとしての可能性に注目が集まった。

 日本では、経済産業省が2018年、「空の移動革命に向けた官民協議会」を立ち上げたことをきっかけに、関連する法整備についての規制緩和が進んでいった。

 そうしたなかで、国は大阪・関西万博を、空飛ぶクルマの本格普及に向けたショーケースと位置付け、官民連携でその実現を目指してきた。

 だが、現実は参加企業の減少や、デモンストレーションの中止など、極めて厳しい状況にある。現時点では、空飛ぶクルマについて、技術面のみならず、持続的な事業性の見地からも先行き不透明といわざるを得ない。今後の動向を注視したい。


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桃田健史 MOMOTA KENJI

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