今後さらに価値が上がること必至
<アメリカで爆発的人気を誇るJDM文化>
「25年ルール」が日本の旧車界隈で大きな話題となったのは2016年のこと。1989年に発売された日産スカイラインGT-R(R32)が歴史的な価値のある高級車やクラシックカーのオークションを専門するRMサザビーズで8万2500ドル(当時の1ドル=110円換算で約907万円)で落札されたことがきっかけだ。
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この現象の背景には、アメリカで「JDM」と呼ばれる文化の浸透がある。JDMとは「Japanese Domestic Market」の頭文字を取った略語で、直訳すると「日本国内市場」ということになり、海外では日本仕様に近い(あるいは準じた)カスタムを総称して「JDM」という呼称が浸透している。
これらJDM車は、アメリカのコレクターや富裕層の間で注目が高まっている。とくにスカイラインGT-R、S2000、ランサーエボリューションなど、1990年代の名車はアメリカでの人気が爆発的に高まっており、高値で取り引きされている。このような日本車が人気の背景には、映画やゲームの影響が大きいといわれている。とくに「グランツーリスモ」シリーズや「ワイルドスピード」シリーズが、日本製スポーツカー人気に火をつけたとされる。
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2025年現在では、2000年以前に製造された車両のみが輸入対象となり、25年ルール対象車種の争奪戦が始まる可能性がある。実際に、2024年にはヴィッツ、シルビア(S15)、ランサーエボリューションⅥ、スカイラインR34GT-R、S2000、レジアスエースH100系、クラウン17系、MR-Sなどが25年ルールの対象となった。
<富裕層の投資対象としての日本製旧車>
アメリカの富裕層にとって、日本の旧車は単なる趣味の対象を超えた投資商品としての側面をもっている。クラシックカー投資は、希少性の高いクルマを購入して、価格が魅力的な水準になった段階で売却することで収益を得る手法で、欧米の富裕層の間ではワインやアート投資と同じように、実物資産への投資手法のひとつとして定着している。クラシックカーはもはや「動く美術品」なのである。
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今回のトランプ関税により、アメリカ国内で日本車の新車価格が大幅に上昇し、アメリカ国内の中古車需要が増えることが予想される。これは「日本からの旧車輸入ブーム」をさらに加速させるだろう。当然そのブームは日本国内の中古車相場高騰を引き起こし、「アメリカで今後人気が上がりそうな車種」は、日本国内でも相場が上がっていく可能性がある。
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以上、トランプ関税により新車の日本車が高額になる一方で、25年ルールの例外措置により2.5%の関税のまま輸入できる旧車に、アメリカの富裕層の注目が集まることは十分に考えられる。投資対象としても魅力的な日本の旧車市場は、今後さらなる価格上昇が予想される状況にある。
日本国内の旧車愛好家にとっては、名車の海外流出と国内価格のさらなる高騰という、複雑な局面を迎えることになりそうである。