この記事をまとめると
■フランス大統領の公用車はセダンにとどまらず大胆かつ多彩
■歴代大統領が乗ってきた公用車を紹介
■DSやプジョーをはじめとして国家とクルマの歴史の交錯を見られる
大型セダンが少ないフランスだからこその個性的な公用車
公用車と聞くと、黒塗りの無難なセダンくらいしか思い浮かばないもの。ですが、ことフランス大統領が乗った公用車となると話は別。本格的な高級セダンが生まれづらかったフランスだったからか、選ばれた車種はバラエティに富んだもの。
ランドールのような閲兵式に用いるカスタムから、ストレッチリムジンや防弾仕様など大統領ごとの仕様もじつに興味深いもの。日本の閣僚もちょっとくらい参考にしたらいいのに、と思うことしきりですよ。
プジョー607 パラディーヌ
不倫報道がスキャンダルとならず、むしろ支持率を上げたことで日本でも有名になったニコラ・サルコジ大統領。いまでいうイケオジだったことや、ハデハデしい行動でも各国から注目されていたはずです。
そんなサルコジ大統領が就任式の恒例となっているパレードで乗ってきたのがプジョー607。フランス国内では最上級セダンだった607の車体をストレッチして、リヤスペースを大いに拡大しています。同時に、ルーフ後半を開閉式としてランドールの機能も加えられています。
プジョー607 パラディーヌのフロントスタイリング画像はこちら
一説によれば、サルコジ大統領の前任だったシラク氏がオーダーしていたとのことですが、マスコミや国民には「やりすぎ」「何様だと思ってやがる」と散々な評価だったとか。
シトロエンCX
そのシラク大統領は、就任以前のパリ市長時代から大のシトロエン党だったとか。クルマのできばえもさることながら、長年のライバルだったミッテラン大統領がルノーを愛用していたことからシトロエンを選ぶようになったという説も囁かれています。
シトロエンCXプレスティージュのフロントスタイリング画像はこちら
就任パレードにはシトロエンSMプレジデンシャルというフルオープンの特別仕様で現れ、これは1972年にポンピドゥ元大統領がフランス髄一のコーチビルダー、アンリ・シャプロンに作らせたものを引っ張り出してきたのでした。
シトロエンSMプレジデンシャルのフロントスタイリング画像はこちら
とはいえ、ルノー・サフランやヴェルサティス、あるいはプジョー607に乗った姿もキャッチされており、「ノンポリ」の烙印を押されたこともある模様。CXのほかにXMも使っていたことがあるのですが、フランス国民はそういうところを見逃さないようです。
シムカ・プレジデンス
フランスの大統領専用車というと、シャルル・ド・ゴール大統領とトラクシオン・アヴァンのイメージが強いものですが、現代の第五共和制となって第1号、すなわちド・ゴール大統領が最初に使ったのはシムカのフルサイズセダン、プレジデンスでした。
シムカ・プレジデンスのフロントスタイリング画像はこちら
これは第二次大戦前にフランスに進出していたアメリカのフォードによるカラーが色濃く残るクルマだったので、ド・ゴールはすぐさま国産のシトロエンに鞍替えさせたといわれます。前述のトラクシオン・アヴァンをはじめ、DS19がとくに有名です。
もっとも、プレジデンスもアンリ・シャプロンによる特別仕様だったらしく、ヨーロッパ初の自動車電話まで装備されていたとか。いまとなっては歴史のひだに埋もれた感のあるシムカですが、1回だけとはいえ大統領専用車になったことは覚えておくべき歴史かもしれません。