「残業代が減り収⼊が減少した」「拘束時間が延びた」「荷物の量が減った」! 2024年問題から1年経ったいま物流業界現場の生の声

この記事をまとめると

■X Mile社が物流業界の働き方に関する実態調査の結果を発表

■調査対象は全国の物流事業の経営者や役員とトラックドライバー

■「収⼊が減少した」という回答者が多いなど、問題が浮き彫りに

「2024年問題」以降も課題が山積み

 物流業界、とくにトラックドライバーに大きな影響を与えるとされた「物流の2024年問題」。確かに、それ以前から運輸事業はさまざまな問題を抱え、その解決策を模索していた。しかし、そういった努力も虚しく、現場レベルでは厳しい状態が続いていたのだという。そこに、以前から懸念されていた「2024年問題」が追い打ちをかけた。あれから1年。いま、現場ではどのような声が上がっているのだろうか。

 ノンデスク(現場作業を主とした業種)事業者向けの人材採用システムを提供するX Mile社が「物流関連二法の法改正(物流総合効率化法と貨物自動車運送事業法)の影響を定量・定性の両面から明らかにし、実態を把握する」ことを目的として行った、「物流業界の働き方に関する実態調査」を発表した。

 調査期間は、2025年3月12日から2025年3月21日。調査方法は、インターネット調査とウェブアンケートによる調査を併用。調査対象は、物流事業者の経営者や役員185名と、同社の求人・転職サイトに登録しているトラックドライバー720名だ。物流業界の経営者、トラックドライバー双方の生の声が、物流業界の現状を浮き彫りにしている。

 トラックドライバーの月収は雇用形態や働き方によって大きく変わるが、おおよそ15万~35万円が大半を占めている。35万円以上は全体の約23%おり、これはおもにフルタイムの正社員の回答だと考えられよう。調査対象にはパート社員や時短社員も含まれているので、月収がやや少ない印象を受けるのかもしれない。

 この月収に「2024年問題」が暗い影を落とした。影響を聞く問いには、「残業代が減り、収⼊が減少した」という回答者が250名(34.8%、複数回答)もいたのだ。ほかにも「収入が減った」「拘束時間が延びた」「荷物の量が減った」などの回答が続き、トラックドライバーから見れば悪い傾向が現れている。

 これに対して、働き方は確実に変化しているようだ。残業の平均時間で月40時間を超えているのは全体の4分の1以下で、3分の1が10時間未満に抑えられている。ただ、先の回答にも「残業代が減り、収⼊が減少した」とあったように、残業の減少が一概に歓迎されていないことは、今後の課題だといえるだろう。

 こういったトラックドライバーの実態に対して、運輸事業者の取り組みを見ると、ややもの足りない感じが拭えない。労働時間の上限規制への対応を聞いた問いには、「配送ルートの最適化」「共同配送の推進」「ドライバーの労働時間短縮に向けた施策」「作業の標準化・自動化」などが挙げられていたが、「導入した取り組み・施策はない」と回答した経営者が3分の1にも及んでいる。

 また、労働二法が改正されたことについて、「ドライバー不足の深刻化」「待ち時間の増加」「運賃の低下」といったことが懸念されているのだ。これらの解決策として荷主に求めることは、「適正な運賃・料金の設定」「荷待ち時間の削減・改善」「ドライバー労働時間短借への理解・協力」などが挙げられた。

「2024年問題」が現実化してから1年経過しているが、いまのところ劇的な改善が見られているとはいい難い。しかし、物流業界・運輸業界ともに古い体質からの脱却を目指して、少しずつ変わろうと努力をしているようだ。長い間に作られた古い体質が一度に変わるのは難しいかもしれないが、業界が一丸となって改善を進められればこれに越したことはない。


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